Healing Sound

for Musicians 第3回 続・アポロンの巫女

 原曲にほとんど手を加えず、元のアレンジをそのまま採用した部分も多々あります。
 つぎにご紹介するモチーフA-4は、「ティカ、ティカ、トゥカツク・トンティカ・・・」という、リズムを言葉によって刻むリズム・ヴォイスが加わります。原曲を踏襲した形ではありますが、何トラックも重なるヴォイスによって、より複層的で有機機械的になりました。

 モチーフA-4

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 つぎのモチーフA-5も、原曲とほぼ同じアレンジです。ここから、「パラ、パラ、パラ、パオ・・・」という新手のヴォイス・モチーフが登場します。

 モチーフA-5

 2012年版『アポロンの巫女』では、ギターを楽曲の要として用いています。
 メロディーAを荘厳するオブリガート(対旋律)も、ギターが重要な役割を担っているのです。
 本来、生のギターを演奏するのがベストですが、私はギターを弾けないので、コンピュータに演奏を任せています。

 つぎのモチーフBは、ヴォイスの部分をミュート(音を消すこと)し、伴奏部分だけを抜き出したもので、いわばカラオケです。注意深く聴けば、ギターの音が16分音符で動いているのが聴こえるはずです(楽譜3)。

 モチーフB

楽譜3

 この伴奏であるモチーフBにヴォイスが加わったのが、つぎのモチーフB-1です。ヴォイスが加わるとギターは聴こえにくくなりますが、だからといってオブリガート(添え役)を務めていたギターの音を抜くと、音楽の立体構造が台無しになってしまいます。
 平面の横に薄い影をつくると立体的に浮き上がってくるように、音に立体感を与える役割を果たすのがオブリガートです。 主旋律に対し、和音の原理に基づき構築されています。

 通常の歌謡曲などでは、歌と伴奏がはっきり分かれているものがほとんどです。歌が主役で、伴奏はあくまで歌の背景になっています。
 しかしヒーリング楽曲の場合、歌(ヴォイス)と伴奏とは、どちらが主役でどちらが脇役という明確な区分けがありません。ヴォイスも楽器のひとつとして、音楽の中に溶け込んでいます。どちらも欠かすことのできない、音楽構造物の一部なのです。
 ちなみに、B-1は、前述のモチーフA-5のすぐ後につづく部分です。

 モチーフB-1

 モチーフBのギターの音をよく聴いておけば、ヴォイスが入ってもギターのオブリガートが聴こえるようになります。ヴォイスと、ギターとを両方同時に意識(クロスオーバー)しながら聴けば、旋律の絡み合いの妙を楽しんでいただけると思います。

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 音楽を創っている時の意識というのは、日常的な家事をしたりする時とはモードが違っています。非日常の世界に意識をシフトさせることで、自分で作為的・能動的につくるのとは異なる、超越界=非日常の世界から音楽を受け取る態勢に入っていくのです。だから「創る」というよりも「受け取る」という方が正しいかもしれません。

 非日常の世界では、何を弾こうとか、こういうメロディーで歌おうという私自身の作為がなければないほど、スムーズに創作が進みます。超自然的な力に委ね切っている時に、自分には想像もつかないようなメロディーやハーモニーが顕現するのです。
 だから歌い出してみて、「あ、こんな奇想天外な歌があるんだ!」と、後で驚くこともしばしばです。
 その時その場かぎりしか歌えない(弾けない)ことも頻繁にあります。 
 こういう状態は、かつて巫女が神々の言葉を託宣として受け取っていたのと、同質ではないかと感じています。

 しかし夫に、「超越的な力に委ねていれば、偶発的にヒーリング楽曲ができるわけではない。何か音楽理論上の厳格なルールに則って表現されているはずだ」と言われてハッとしました。確かに、自分ではとくに意識していませんでしたが、音の連なりが音楽として成り立つためには、いくつかの基本ルールが存在します。
 そのひとつが、ビート(拍子)です。
 ヒーリング楽曲にかぎらず、多くの曲の柱となっているのが、ビートなのです。

 クラシック音楽でも、ポピュラー音楽でも、基本のビートを決定するため、楽譜の一番最初に「拍子記号」が記されます。4分の4拍子とか、8分の3拍子などです。モチーフBを示した楽譜3の左側(ト音記号の右)には、4という数字が縦に2つ並んでいますが、これが4分の4拍子を示す記号です。

『アポロンの巫女』は、ほとんどのポピュラー音楽と同じ4分の4拍子です。この4分の4拍子という基本ビートの中で刻まれるリズムの中に、ヴォイスも、ギターも、その他すべての楽器の音がタイミングを合わせて入っています。
 ビート以外にも、コード(和音)など、重要な基本ルールが存在します。たくさんのトラックに別の音を重ねていっても目茶苦茶な雑音にならないのは、基本ルールの中で音が重なり動いているからで、クロスオーバーされた音同士が互いを引き立て合い、複雑精緻な音の立体織物を編んでいくからなのです。
 このルールは数字として表わすことができます。リズムや音によって、複雑な計算がなされているのが、音楽だといいかえることもできるでしょう。私は数学が大の苦手でしたが、「実は音楽で数学をやっていたのだ」と最近夫に言われ驚きました(注)。 
 ただし、何もかもが完璧にルールに則っているわけではありません。ルールから外れて、普通こんなのあり得ない、と思えるような音やリズムが入ることで、今まで聴いたことのない斬新な音楽が顕われることも多いのです。

 最後に、ヒーリング楽曲をより楽しんでいただくために、夫から教わったマナ(修法)をご紹介します。
 少し大きめのボリュームで音を聴きながら、両手の指で両耳の穴をふさぎます。耳の穴を塞いでも、骨伝動による音が聴こえてくるはずです。そして、音を耳(だけ)で聴こうとするコマンドを感じ取り、オフにしていきます(耳がある場所に意識を集中して外から来る音を聴こうとすることを手放す)。
 すると、それまで耳だけ、あるいは上半身側だけで聴こえていた音が、全身的に拡がり、足下からも響いてくるようになります。体の中が、音によってビリビリ振動している感覚も現われます。私の場合は、とくに足先や足裏がビリビリします。
 こうして全身丸ごとで音を味わえるようになると、耳の穴から指を外した後に、びっくりするほど音がよく聴こえるようになります。

 それでは、『アポロンの巫女〜2012〜』を冒頭からモチーフB-1まで聴いていただきましょう。目を閉じ、時折上記の修法を執り行ないつつ聴けば、音楽によって心身の裡(内)側に起こる変化が体感できると思います。

アポロンの巫女〜2012〜 部分 約6分30秒

2012.03.14 <アポロンの巫女 終>

注:音楽と数字(数学)が密接に関係していることは、音符や拍子に数字が使われていることからも理会(理解)できます。4分の4拍子というのは、1小節を大きく4分割したビートであることが、基本の約束事となっています。すると1小節の中には、1拍目から4拍目までという、4つの基本リズム単位ができます。その基本単位1拍をさらに2分割すると、1小節は8分割されます。これが、いわゆるエイト・ビートです。
 アポロンの巫女は、1拍を4分割して、1小節を16分割した16ビートのリズムが基本となります(原曲・2012年版とも)。モチーフBで示したギターのオブリガートは、16ビートのリズムとぴったりリンクして入っています。
 こうして数字で説明するとややこしいですが、音で聴くと単純明快です。