[ ]内はルビ。
『ボニン・ブルー 小笠原巡礼:2013』に記した通り、小笠原での野生イルカたちとの出会いが不完全燃焼に終わったことを、いささか残念に思っていた。
が、もっともっと、と求め始めればキリがないし、外の世界における私の時間が残り少なくなりつつあることは充分承知していた。
そんな折、伊豆七島の利島[としま]周辺に人懐こいイルカたちが棲みついていて、一緒に泳げるとの新情報が飛び込んできた。
小笠原巡礼から約1ヶ月後。私は妻を伴い、東京都・利島を目指した。
東京で生まれ育った妻は、利島の海のクリアーさに驚いていた。
高速船を使えば都心からわずか2時間で利島に着く。が、ひとたび海が荒れれば、接岸不可能となり、乗る客も降りる客もそのままに、船は次の寄港地へ向け立ち去ることも少なくないという。
そうしたアクセスの不便さゆえか、利島を訪れる人はまだまだ少ない。島社会にはありがちなことだが、昔から排他的な土地柄であったともいう。
が、それがかえって幸いし、利島行きの高速船のチケットも、宿も、ドルフィン・スイム船の予約も、直前であったにも関わらず、すんなり取ることができた。
夏休み真っ最中というのに、この人気のなさには、何か相応の理由[わけ]でもあるのじゃないか、と勘ぐりたくなったほどだが、そんなものは別になかった。
実際に行ってみてわかったが、素晴らしいところだ。ただし、利島には観光名所とかレジャー施設のようなものはまったくない。
知る人ぞ知る釣り人天国、そして椿油の日本最大の産地でもあるそうだ。
朝、都心の竹芝桟橋を出発して昼頃利島に着き、その午後にはもう船上の人となって、ドルフィン・スイムに臨んだ。
利島で最も古くからドルフィン・スイム・ツアーを主催し、イルカたちの保護活動を行なってきたキャプテンの操る船に乗り込み、港を出て数分。
「イルカがいました」とのアナウンスがスピーカーから流れた。
小笠原で長時間かけイルカを探し求めた直後だったから、あまりのあっけなさに、実感が湧かないほどだった。
が、ドルフィン・スイムはやはり一筋縄ではいかない。
最初のエントリーではイルカの姿を確認することさえできず、2度目も後ろ姿を遠くから見送ったのみ。
しかし、3度、4度と繰り返してゆくうちに、次第次第にキャプテンとの息が合ってきて、彼が何を意図しているのか、何を伝えようとしているのか、以心伝心で感じられるようになり始めた。
少しずつ、少しずつ、海に入るたびごとに、イルカたちとの距離が近くなってゆく。
時に、すぐ目の前を大きな体がサッと横切る。
近い。近い。
こちらの目をのぞき込んでくるイルカもいる。
それではスライドショーだ。
各スライドショー作品とクロスオーバーした音楽は全部妻によるオリジナル曲。
私たちの作品をマキシマムに味わうためには、暗い部屋でPCのモニター画面の明暗を中間に設定し、音量は心地よい範囲内で大き目にすることをお勧めする。ヘッドフォンを使えば、臨場感がさらにアップする。