Healing Discourse

ヒーリング・アーティスト列伝 第2章 超越へのジャンプ 〜田中守平(太霊道)〜 第7回 大陸歴遊

 明治44年(1911)秋、辛亥革命勃発前夜。
 守平は、以前から支那革命党の志士と堅く相結び、密かに時運が至るのを待っていた。
 この変に際し、大いに決するところがあり、年来の大陸策を実現せんがため、渡清の航についたのであった。
 深く支那の内地に入り、密々の間に画策努力すること1年半。南船北馬、東舟西筏[とうしゅうせいばつ]、よく図りよく断じ、機略縦横・神出鬼没、人をして端倪[たんげい]すべからざる活躍であったという。
 しかし、彼が関わった活動の多くは、軍事あるいは国家レベルの機密事項に属していたらしく、その内容の詳細は記録に残されていない。
 守平の生涯には、このように謎のまま残された空白部分も多い。私と友人たちがこれまでにかろうじて集め得た散逸資料からでは、彼がいつ結婚したのかさえわからない始末だ。妻子を日本に残し、大陸へと旅立ったようだが。

 清朝が倒れた後、独り袁世凱が意をほしいままにするのみで、日本の勢威が伸びるきざしはまったくなかった。広漠たる天地の中で、日本当局の無能・無策を嘆ぜしこともいくたびぞ。
 胸中の磊塊(らいかい:心中穏やかでない様)行なうに所なく、守平は支那を去って満州・朝鮮を歴遊視察し、もって将来の策源を探ることにした。
 悠々自適、その神秘霊力を実際に応用しつつ京城に留まること、4ヶ月。その名はたちまちにして朝鮮十三道を風靡し、各道より来たり参じる者は真に無数。
 さらに満州・大連においては、霊名遠近にあまねく、南満州全土はもちろん、チチハル、ハルピン、北京、天津、上海、漢口等の各方面より雲集し、先を争って霊化に浴そうとする者は未明より夜半に渡り、門前は「さながら潮[うしお]の如く」であったという。
 その実際の様子を伝える当時の新聞、雑誌の記事を、以下にいくつか掲げてみよう(旧漢字・仮名遣いは現代的に改めた)。

大陸歴遊の頃。撮影場所、年月日、ともに不明。

「田中氏の霊子治療は、施術開始以来非常な盛況にて、毎日午前4時頃より患者が詰めかけ、受付締切の8時頃までにはいつも5、60名に達し、ために施術は毎日午後10時頃までほとんど間断なく、それより写真による遠距離施術を施すため、いつも同氏の臥床は午後2時頃に至る由。これも霊子の作用かは知らねども、とにかくも精力の旺盛なるには、何人[なんぴと]も吃驚[きっきょう]せざるはなし」(『満韓実業界』明治45年3月15日)

「去る21日以来、安東県において一般公衆に施術中なる霊子治療について聞く所によれば、由来この種の治療を乞う者ほとんど医療の道絶えたる慢性の痼疾もしくは不治の難症ともいうべき者多く、したがって治療上にもすこぶる困難を感ずとのことなるが、かかる痼疾難症に対しても霊子の効顕は真に奇跡的にて、驚嘆すべきものあり。
 市場通り4丁目河邊ミト(51)は、多年脊髄症及び座骨神経痛にて困難し居たるが、わずかに1回の施術を受けたるのみにて痛苦ぬぐうが如くに去り、元寶館に滞在せし村松義雄の神経痛また1回にて全治。市場通り北田英太郎(30)の慢性気管カタルこれまた施術を受けたる当日より咳漱やみ、7番通り古藤延(1)の脳病及び胃腸病、慢性リュウマチ全治せる他、各種の疾病及び悪癖等の治癒せるもの枚挙にいとまあらず。
 一品の薬物を用いず、一個の機械を借らずして、しかもよくかくのごとく奏功し得るは、真に不可思議というの他なし」(『安東新報』大正元年9月29日)

 釈尊の再来か、あるいはイエス・キリストの生まれ変わりか・・・守平と接した人々の多くが、そんな風に感じたようだ。
 彼は、病人を手でいやすことができただけでなく、満身からただならぬ神々しい<雰囲気>を放射していたのだろう。超越的な意識の絶頂を体験すると、人はそうしたオーラを自然にまとうようになる。
『太霊道神教聖典』によれば、恵那山での長期断食直後の明治38年10月15日、守平は「接神入覚」を遂げたらしい。宇宙の根源とダイレクトに触れ合い、人間存在そのものが全き変容を遂げる現象——いわゆる「悟り」の境地——を体現したという意味であろう。
 その体験以来、田中守平はまったくの別人として生まれ変わったようだ。
 一風変わったところのある、多少エキセントリックで才気煥発な一青年は、もはやどこにも存在しなかった。
 金剛の身体と妙威霊力とを備え、揺るぎない絶対不動の大信念に貫かれた<真人>が、今や守平の裡に宿っていた。

「霊子治療の創始者・田中守平氏が当奉天に来てその独特の妙手を振るっていると聞いたので、記者は元来その作用のいかなるものかについてすこぶる疑いを抱けるところから、一つ実見せんと思い、臨時施術所なる巴ホテルを訪れた。
 案内されて座に通ると、ちょうど施術中である。受術者は年輩24、5の青年で、黙念静座し、首を垂れて畏[かしこ]まっている。 
 術者は、記者の入ってきたことも顧みず、一心不乱の状態で、やがて5、6分経つと、不思議! 不思議! 被術者の体がだんだん後ろの方へ傾くと思うと、たちまちブルブルっと自動し出して、手が動く、体が動く、足が動く。ついに座布団を離れて約2、3尺も上に吊り上げられたと思う刹那にストンと下がる。また吊り上げられてストーン・・・。こんな事が数回続いて、バッタリ自動がやむ。
 それでも術者は懸命に施術を続けて、約10分も経つと神厳な態度を取って、これでよろしいと宣告する。
 初めて記者に挨拶して曰く、これがいわゆる霊子の顕動状態です。一つあなたをこの状態にしてみせますから、ここへお座りなさいと言う。
 最初馬鹿にしていたものの、術者の前に座ると何となく心から改まってくる。ジーッと被術者を見たままで、あなたは脳が悪い、胃腸が悪い、そして痔疾がありましょうと言う。まったくそうであるには驚いた。
 顕動状態にしてみせますからとて、両手を組ませる。霊子交手型の第一形式とかであるそうな。
 術者がウン!と気合をかけて凝視することしばらくで、なるほど記者の両手は動き出して、動く動く、自分で止めようとすると、ますます激しく動く。されど、精神状態に何の変化もない。意識は充分働いている。
 先の青年同様、宙に浮き上がる。いかにも愉快でかつ不思議だ。ストーンと落ちる。
 2階の床が抜けたというて下では大騒動。下女が飛び出す、女将が逃げる、番頭が駆けつけるという次第。そちらは無事にすんだが、すまぬは自動状態で、約20分ほど継続してピタリと止まる。
 次に、小西関向井洋行の加藤愛子という美婦人が来て、先生から霊子運動を教わって毎日家でやっていますが、盛んに自動して体が大分丈夫になり、鼻カタルや子宮病や脳病で困っていたのがタッタ3回の施術を受けてスッカリ治りました、と活発に語る。満鉄小学校の教師・瀧川君も来て、霊子運動の効能を喋々と話して聞かせる。誰かが、君も門人になったらどうだと勧める。科学で固めた記者の頭は、チョット変になってきた。
 田中氏の説明により、大分会得する所はあったが、しかしやはり不思議という他はない。むしろ不可解、真に奇絶! 妙絶と称すべきであると、感じたままをここに報道する」(『奉天通信』大正元年10月20日)

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 私が霊子術にとりわけ深い関心を抱くのは、シンプルな修法の裡に田中守平の手の使い方・意識が、最も端的に表現されているからだ。
 守平が、いわゆる「霊力」を発し使っていた時の手は、解剖学的にみてどういう状態(姿勢)となっていたか・・・を、霊子術の二大双璧をなす顕動法・潜動法を通じ具体的に体感できる。これは、心身の修養・錬磨に真剣・誠実な関心を抱くすべての人にとって、至高の宝と呼んでいいほどの価値ある情報といえよう。
 霊術家の手を体現すれば、あなたも霊術使いになれる。手と身体各部を対応させつつ、全身レベルで骨格状態(姿勢)を変換すれば、あなたの行ないにはシャーマニックで魔術的な質が、突如として付与されるようになる。
 上掲の記事中にあった「遠距離施術」なるものも、太霊道の霊子術を修めれば実際にできるようになってくる。

 随分前のことになるが、学研『ムー』誌に依頼され、一般読者に遠隔で霊子作用を伝える実験を行なったことがある(1992年7月19日)。決められた日時に、受け手は正座して静かに待ち、私から遠隔伝達される霊子作用を感じ・受ける。そういう実験だ。
 わずか10分間の施術を、午後7時と午後9時の2回、執り行なったに過ぎない。が、結果は驚くべきものだった。
『ムー』誌10月号(No.143)で発表されたアンケート結果によれば(実験3週間後に締め切り・集計)、合計984通の報告書が寄せられ、実験中、身体に振動(顕動)を感じたと報告した人が808人(全体の92%)もの多数にのぼったという。
 振動が手だけでなく、体全体にまで及んだ例も少なくなかった。
 『ムー』誌より、いくつかの報告を引用してみよう。
◎最初指先がじんとしてきて、つぎにだんだんと体全体が動き、前から痛かった左足をなでたり、両足を叩いたりした。(千葉県/67歳 山本光枝さん)
◎実験開始5分くらいして両腕に振動が起こり、その後両指先で腹、胸、肩、首、頭、喉、胸、腹、足の外側、足の内側の順に軽く叩きはじめた。(愛知県/21歳 新森健次さん)
◎1回目は上肢だけに振動が起こり、強くなったり弱くなったりした。その後、振動が体全体にまで広がり跳び上がるまでにはいかなかったがかなり上下した。2回目はもっと烈しく振動し、少しだが跳び上がるほどだった。(広島県/21歳 加藤実由紀さん)
◎両腕が合掌したまま体全体が左右に揺れ始めた。最初は自分の意思かと思ったが、止めようと思ったが止まらなかった。(神奈川県/36歳 佐々木信夫さん)

「痛みが取れたり、体に変化が起こりましたか?」という質問に対しては、約70%の680人がYESと回答している。
 これらの報告の代表的なものとしては、
◎体が動いた部分が暖かくなり、余分な力が抜けた(岐阜県/24歳 永治好宏さん)
◎1回目の実験のあと気づいてみると、手が暖かくなっていた。2回目の時は足も暖かくなって気持ちよかった。(岡山県/37歳 松田晃明さん)

 それ以外のものでは、
◎今まで病気でかなり疲れていたが、パワーがついてきたような感じがする。(長野県/40歳 浜信道さん)
◎慢性化していた疲労がいくぶん軽くなった。(栃木県/22歳 太田康一さん)
 などがあった。
 また、興味深いものとして、次のような報告もあった。
◎実験当日にできた人さし指の切り傷がくっついた。しかも、つき方が普通の治り方とは違っていた。(愛知県/17歳 渡辺倫子さん)
◎数日前から気になっていた炎症の痛みが消えた。(栃木県/匿名希望)

「こうなるはずだ」「こうなってほしい」といった被験者の願望・予断などが投影されているケースも、もちろん中にはあるのだろう。しかし、『ムー』誌編集部の分析にもあるように、「680という数字のすべてが思い込みということはあり得ない」し、「前述の例のように思い込みでは説明できない体の明確な変化も多数報告され」ているのだ。

 この他、全体の37%にあたる360人が、 超越的な霊力に類する力が発現した、と報告してきたそうだ。
◎母が痛めていた脇腹に手をのせて数分間集中したら、母が痛みが消えたと言った。(宮城県/14歳 門田隆昭さん)
◎水の入ったコップに手をかざしたら、水の味と温度が変わった。(千葉県/22歳 寺田恵さん)
◎実験終了後、他人の言動が事前に分かるようになったが、数時間後には元に戻った。(愛媛県/18歳 岡小弓さん)
◎自分の前世を見ることができた。(兵庫県/59歳 河島孝宣さん)
◎実験中、モーター音のような音がかすかに聞こえ、未来の自分の姿が見えた。(京都府/30歳 山口貴子さん)

 私は専門の療術家ではないが、友人や親類、家族の病気、体調不良に対し遠隔療法を執り行ない、劇的に奏効したことがこれまで数え切れないほどある。

<2010.12.30 麋角解(しかつのほどける)>