Healing Discourse

ヒーリング随感2 第14回 ヒーリング・バランス体験記

◎以下にご紹介するのは、愛媛県在住のN君から寄せられたリポートだ。

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 ヒーリング・バランスによってヘルニアの苦しみから救われた時のことをご報告したいと思います。
 地区消防団の放水試験があった時のことですが、その際、私が立っていた池の階段が壊れて池に落ち、腰を強打してしまいました。
 それから10日ほどしても、尻から右爪先にかけて痛みが取れなかったため、病院にいきレントゲンを撮ると、少し椎間板がつぶれているために神経を圧迫していると言われ、できるだけ安静にして薬を飲むよう指示されました。
 しかしながら年度末という事もあり、仕事が忙しかったため、薬を飲みつつ仕事を続けていました。
 そして翌月に入り、ある時重い机を持った際、「グキッ」という音とともに腰に強烈な痛みを感じ、次の日から右の尻より爪先までが痺れて動くことさえままなくなりました。
 病院に行くと、コルセットをつけて安静にして寝ているように言われ、薬(痛み止めと炎症を止める薬)を処方され、低周波などの電気治療を指示されました。
 それから2週間近く寝たきりの生活が続き、薬が切れると病院に行くようにしていましたが、症状に変化は無く、本当に完治するのだろうかという不安を覚えるようになりました。
 ヒーリング・アーツ仲間を通じて現在の状態を高木先生にご相談したところ、先生より「椎間板がつぶれて背骨が歪んだ状態を、コルセットで固定してどうするのか」、「腰が縮んで神経が圧迫されているのなら、自分で伸ばすことを工夫すればいい。私ならそうするがね」、「現にある痛みの原因を放置して、痛みを感じなくさせるための薬など飲んでも仕方がない」といった諸種の御教示と共に、遠隔ヒーリングを執り行なっていただけることになりました。
 この遠隔ヒーリングというのは、離れた場所にいる相手とヒーリング作用を響き合わせるという術[わざ]なのですが、私はこれまで先生より何度か直接伝授を受けたことがあり、グループ単位の遠隔ヒーリングも幾度か経験しているので、直接触れ合わずとも充分なヒーリング感応が起こるだろう、とのことでした。

 実施時間になり横になって静かに待っていると、腰が自然に動き始め、みるみる腰の周辺が柔らかくなっていくのがわかりました。時間にして10分程度だったと思います。
 次の日には尻及び爪先から土踏まずにかけて軽く痺れている感覚が残っていたものの、ゆっくりと歩く事ができるようになりました。前日まで布団の中でうんうん唸っていた事が信じられないくらいの回復ぶりに、驚きと共に感動してしまいました。
 これまでの経緯を見ていた妻からは、「そんなに簡単に治るんだったら、最初から病院なんか行かなければよかったんじゃない?」などと言われる始末でした。
 遠隔ヒーリングの最中、私の腰がどのように縮んでいるか、またそれをどのようにして伸ばしていけばいいか、先生は自然にお分かりになったとのことで、それを解消する体操のような方法も教えていただきました。熱心にそれらを行なう事で少しずつ痺れが取れていき、家の中で生活するには不自由しないくらいに回復するまで時間はほとんどかかりませんでした。コルセットや薬の使用も完全にやめました。

 さらに1週間ほどがたち、仕事ができるまでに回復すると、高木先生の御配慮により、相承会(高木先生よりヒーリング・アーツの直接伝授を受ける学びの場)への参加を特別に許可されました。なかなか足の違和感(痺れ)が払拭できないでいたのですが、それを全部取り払う方法を教えてあげよう、とのことでした。
 相承会では、ブリッジして頭と爪先だけで体を支え、その状態で腰をパートナーに上下に揺さぶってもらうといった、つい先日まで激しい腰痛で寝込んでいた私にとっては恐怖心を覚えるような修法も扱われたのですが、先生のご指示に従って丁寧に、段階を追って行うことにより、無理なくこなしていくことができました。
 まだまだ腰が縮んでいた事に気付かされると共に、腰がこんなに伸びるのかという驚きの連続でした。その時学んだ修法の中には、前屈の姿勢をとって、腰を中心に上半身と下半身を均等に意識するというものもありました。
 最初前屈すると、床からかなり指先が離れており、まさに腰が縮んでいるのが一目瞭然という状態でしたが、ペアを組んだパートナーに助けていただきながら上半身と下半身を均等に意識していくと、腰のところでギュッと固まっていた力が抜け、「腰が伸びていく」感覚がはっきりとわかりました。そうすると手がどんどん床に近づいていき、あっという間に掌が床にぺったり着いてしまいました。
 この変化には、自分自身驚いてしまったのですが、周りで見ていた人もビックリされたようで、「本当に腰を痛めていたの?」と聞かれるほどでした。その後で立ち上がった時の、腰から迸り出た爽快感、開放感は今でも忘れられません。

 また、重いものを持ち上げる際の姿勢についても、いろいろ教えていただきました。今まで体を(床に対する)垂直線(引力の方向)に合わせて使うという事が無く、背中に力を入れて物を持ち上げる事が普通になっており、その繰り返しが腰への負担を蓄積させる結果になり、限界に達した時腰痛や椎間板ヘルニアになるのだという事がわかりました。
 物を持つ時、床に対して垂直な線を肘や肩などに意識すると、姿勢が自然に変わり、動きの質が変わりました。腰に固まっていた力が、両足を踏ん張る力に転化される事がわかりました。
 逆に、これまでのように背中や腰に力を入れて物を持つと、腰を縮める動きになり、気持ち悪さを感じました。ヒーリング・バランスを学び、垂直線の感覚を意識化しなければ、そもそもこの不快感を感じる事さえできなかったように思います。
 あらかじめ先生が予告された通り、相承会を終えて家路につく頃には、これまでしつこく居座っていた不快感が完全に一掃され、腰にみなぎる溌剌とした健康感、やる気を楽しんでいました。

 その後現在に至るまで、腰痛は再発の気配もありません。腰を伸ばす修法を毎日真面目に実践し続けたおかげで(何せ私にとっては死活問題ですから)、先日参加した講習会では、「今回の参加者の中で一番腰が伸びている」と高木先生からお褒めの言葉をいただけました。
 ヒーリング・バランスを学ぶまでは、仕事中に不自然な姿勢を取り続けた結果、腰がピリピリと痺れたような感覚になる事が多く、これは職業病だと諦めていたのですが、仕事中を含め普段の生活の中で垂直線を身体各部に通すということを意識し実践すると、腰のピリピリとした感覚を感じることがなくなりました。
 私と同じ仕事(タイル職人)をしている人には、腰を悪くしている人が多く、皆口を揃え「腰が悪くなるのは職業病だから、上手く付き合っていかなければならない」と言っており、その言葉を信じていたのですが、ヒーリング・バランスを学んで考えが変わりました。
 椎間板ヘルニアを患うと、長期間動けなくなるという話を聞きます。中には半年以上も安静にしていなければならない人もいるそうです。もしこのヒーリング・バランスの学びを知らなかったら、私も長い間寝たきり状態であったかもしれず、この素晴らしい学びに出会えた事に感謝しています。<M.N. 男性・愛媛県>

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◎私は、特に変わったことを指導したわけじゃない。
 腰の定義と身体運動における役割。腰と腹を連動させながら動く。脚裏中央の正確なラインをストレッチする・・・など、ごく基礎的かつ常識的なこと(どこで折り、伸ばすか)を、当人自身の体で再確認させただけだ。
 N君の場合、ヒーリング・アーツの基本を修得済みであり、若く、体力もあったから、不具合を一気に調律する道を指し示した。誰にでも同じようなやり方を勧めるわけでは、もちろんない。

<2010.07.03 半夏生(はんげしょうず)>