Healing Discourse

ヒーリング随感4 第15回 続・龍宮拳伝授 3

◎波紋棒。
 身体を柔軟にする効果があるので、龍宮拳では初歩の段階から積極的に棒術に取り組む。
 今回は、冒頭、まず<時間の舞>を示演した。
 視点を画面中央に定め、観の目で画面全体を均等に、リラックスして観続ければ(時折かしわ手)、不思議や、時間が・・・・ゆっくりになったり、ふと止まったり、また「流れ」出したり、かと思うと再び停止して張りつめたような沈黙が訪れたり・・・・など千変万化するのが、体験できるだろう。もちろん私は、心理的時間について述べている。
 受け手は、もっとダイレクトに、触覚を通じて時間感覚の変化や時間停止を味わっている。体験者たちによると、「世界が止まる」そうだ。
 身体内の流動感覚を時間感覚とクロスオーバーすることで、こうしたことが可能となる。最初は、ピタッと瞬間的に全身の動きを止めることを、息を止めることと合致させ、同時に、心理時間を凍結させる(その場にずっと居続ける)ことから練修を始めるといい。うまくいくと、周りで観ている者たちの時間までが凍りつく。
 ちなみに、心理的な時間は、クリシュナムルティが喝破したようにあくまでも錯覚であり、実在しない。

◎次は、幕間劇[まくあいげき]的に、胸郭柔軟法に共に取り組んでいる様子。
 妻の『一日一舞』柳の帰神フォトが最近発表されていたが、シシャモを柳葉魚と書くことにかけて、ヒーリング・アーツ流の「ぶっつけ(オマージュ)」をやってみた。シシャモだのマングローヴガニだの、ふざけて遊んでいるように見えるかもしれないが、遊んでいるのは事実だが命がけの真剣な「遊び」であり、ふざけて「お遊び」をやっているわけではない。
 修法は、第5回ムービー3『波紋棒稽古 2』にて示現したものだ。
 始めのシーンでは、棒を使って調律した後、受け手が背中の膏肓で(肩甲骨を通じ)腕を受け支えるよう導いている。それがわかると、これまで胸(の厚みも含む)で仮想的に腕を支え(ようとし)ていた余計な努力感をすべて落としてしまうことができる。胸の奥に分厚く吊り上がっていた重みが、ズルリッと滑り落ち、下腹の内部に頼もしく満ちて安定・充実する。この安定と充実の感覚は、多くの人が無意識のうちに切望しているものかもしれない。
 今や、胸郭は固定的なかたまりであることをやめ、たぷんたぷんと波打ち始める。
 言うまでもないと思うが、これは物凄く気持ちいい。
 龍宮拳では、こうした自由自在な胸郭を重視し、その錬成法にも重きを置いている。

◎今回、波紋の拳を初めて公開したが、その伝授の様子も撮影されている。
 準備として、「胸郭の和らげ」「下脚のこと(滑車関節の覚醒)」「肘の武術的覚醒」などを修し、いよいよ波紋の拳の実伝に入る。
 波紋の拳は、実際に拳の内部が波打つのだ。
 ムービーの後半あたりで、深い帰神状態へと自然に意識シフトして舞が顕われそうになった際、同時に、たくさんの拳が雷神の太鼓みたいに体のまわりを取り巻いているヴィジョンが閃いた。波紋の拳の猛連打を「やらされ」そうで、「疲れるのしたくないから・・・」などとグズグズ抵抗しているところが我ながら笑えるが、そこから続けて何か言おうとした瞬間、レット・オフで時空感覚を引っ繰り返したら、「雷神拳」(仮称)が自然に顕われてきた。
 ムービー内で示しているように、特定の箇所に連続的にヒーリング・タッチしていくことで、この作用(マナ)を召喚できる。主なポイントは、(龍宮拳の)肘、橈尺関節、掌芯(掌中央の円く凹んでいるところ)、それから膏肓も大切だ。そこの強張りがほどけて胸郭全体が和[やわ]らいでいる時、最も効率の良い動きができる。
 雷神拳は、意外なことに、リラックスしながら波紋を往還させればいいだけで、あまり力を使わない。ゆえに、ほとんど疲れなかった。
 これは、龍宮拳のすべての術[わざ]がそうだ。龍宮拳伝授会の折り、結構激しく取っ組み合い、動き続けて、受け手たちはかなり大変な思いをしているようだが、私自身はほとんど疲れを覚えないし、息切れもしない。
 これは私の体力が優れているからでは決してなく、龍宮拳のマナ(術)が非常に効率的な動きを生むからだ。

 なお、上記すべてのムービーを通じ流れているのは、ヒーリング・アーツ練修曲『たまふりエチュード』。アルバム『マンドラゴラ』収録。

<2012.04.14 虹始見(にじはじめてあらわる)>