Healing Discourse

ヒーリング随感5 第16回 帰神小論

◎日本神話の中で最も有名なストーリーの1つ、「天の岩戸隠れ」にて、弟スサノオの暴虐に怒った太陽神アマテラスが天の岩戸に籠[こ]もり、世界が暗闇に閉ざされた時・・・・。
 岩戸の前でアメノウズメが神懸かり状態となり、乳房や陰門(女性器)をあらわにして踊り狂うと、その場に集った神々がワッと大笑いし、いったい何事かと訝[いぶか]ったアマテラスを外へ誘い出すことに成功した、云々・・・・。

◎帰神[きしん]とは、神の意識、神の言葉、神の状態、神の舞(動き)などを、巫者[ふしゃ]が我が身に宿し、神の意を伺うことであるとされている。
 そして神道家によれば、アメノウズメは、帰神法(神懸かりの術)の祖であるという。

◎私は前々から天の岩戸開きの、アメノウズメが神懸かりとなるくだりに、何か釈然としない妙な違和感を覚え続けていた。
 疑問点を整理してみよう。
○アメノウズメが乳房や性器を露出して神々が大笑いしたというが、性を軽んじ、揶揄[やゆ]する現代人と違い、裸体やセックスに対しもっと大らかで、自然であったはずの古代の神々が、乳房や陰門[ホト]をさらけ出したくらいで、なぜ笑ったのか?
○そもそも、アメノウズメの行為は、帰神法とどのように結びつくのか?
○すでに神であるところのアメノウズメは、一体いかなる神をその身に宿したというのか?

◎このように疑問を整理してみると、答えは自ずから明らかと思える。
 アメノウズメはアマテラスの意識、あるいは状態をその身に宿していたのではあるまいか?
 長らく岩戸にこもっているうちに、性的な欲求不満が高じ(何せアマテラスは豊穣の神だ)、乳房や子宮がうずき始めた、そんなアマテラスの状態がアメノウズメの身に映し出されたからこそ、神々はどっと笑った。
 そのように考えれば、神々の笑いの意味も理会でき、アメノウズメが帰神法の祖とされることにも納得がいく。
 むろん、私の個人的な意見に過ぎない。誰に対しても、それを押しつけようとは思わない。

◎なぜ「帰神」なのかも、帰神法に関心を持つようになり、妻の美佳の協力を得て、古資料を元にあれこれ実験を繰り返し、ある程度の成果が表われ始めた後も、しばらくの間はよくわからなかった。
 降神とか、招神ならばわかる。神を招き寄せ、我が身に降臨せしめること・・・・。
 が、帰神とは、そもいかなる意か?

◎ある時、ふと気づいた。
「我(自我)」を中心とするから、わからなくなるのだ、と。(お偉い)自我[エゴ]様のところへ、神がやってきて乗り移りあれこれ教えてくれる。まるで召使いか魔法のランプの精みたいに。
 ・・・・そんな馬鹿なことがあるものかッ!
 こちらの方が「我」を空[むな]しうし、神の元へ帰るのが本筋というものだ。
 どこか、肉体の外側の空間に外在する神ではなく、身の裡[うち]に内在する神の元へ返り、帰一する。
 それが帰神という言葉の原義ではあるまいか?

<2013.10.17 断食 Day24>