フィリピンを北の頂点として、西はインドネシアのスマトラ島やマレー半島、東はニューギニア島・ソロモン諸島あたりを下辺とする壮大な三角形・・・を、思い描いていただきたい。古来、マレー諸島(Malay Archipelagoアーキペラゴ)と呼ばれてきた、そこは、世界最大の多島海であり、地球上で最も生命の種類と数が濃密な場所だ。この三角形で囲まれた海域を、コーラル・トライアングル(サンゴ三角形)と呼ぶ。全世界のサンゴの種の半分以上がここに生息し、そこに暮らす魚はおよそ3000種。エビやカニ、貝の種類も多い。海のアマゾン、とそのエリアを呼ぶ人もいる。生物多様性の圧倒的な高さと共に、熱帯のジャングルと同等、あるいはそれ以上の酸素を、サンゴ礁が生み出し地球の生態系を支えているからだ。

 日本の琉球列島(沖縄や奄美)も、黒潮によってコーラル・トライアングルとじかにつながっている。つながっている、というよりは、コーラル・トライアングルの一部とみなしても差し支えなかろう。コーラル・トライアングルのいくつかの海を私は実際に訪れたことがあるが、サンゴや魚の種類の豊富さ、海の美しさ、神秘感・・・、コーラル・トライアングルの諸々もろもろの特徴すべてに共通する要素を、奄美・沖縄の海にもみいだすことができる。
 とりわけ、テーブルサンゴの目をみはるような群生の見事さで、コアな南方旅人たちの間ではつとに有名な・とっておきの場所が、沖縄の八重山諸島にはある。
 鳩間島はとまじま・・・。石垣島の西、イリオモテヤマネコで有名な西表島の、すぐそば。人口数十名、のんびり散歩して1時間程度で一周できるような小さな島だ。めぼしい陸上の観光資源は何もない。観光施設もない。が、沖縄でもトップレベルの美しい海と、豊かなサンゴ礁をようしている。

 ・・・いや、「いる」とか「ある」ではなくて、「いた」、「あった」と述べた方が正確かもしれない。
 2016年、サンゴが突如真っ白になって死滅する白化現象(ブリーチング)が世界各地で起こった時、石垣島と西表島の間にあるサンゴ礁地帯(石西礁湖せきせいしょうこ)もまた、壊滅的な大打撃を受けた。鳩間島も例外ではなかった。それから4年が経ち、石西礁湖のほとんどのエリアでサンゴの回復はあまり進んでないという。が、鳩間島周辺の海の中は現在、どういう姿になっているのだろう?

 本土ではすでに秋の気配をそこかしこに感じ始めた頃、夏の名残を追いかけるようにして独り沖縄へと旅立った。
 人類のヒーリングと地球調和を祈念しつつ。
 数年前から私をき立ててやまなかった、「鳩間島へ巡礼すべし」との<海からの呼びかけ>に応えて・・・。

クリックすると拡大(第二回以降も同様)

 海から観た鳩間島だ。真ん中に立っている白くて細長いのは灯台。振り返ると、西表島の八重に重なる神秘的な山波が海の向こうに横たわっている。
 海へ目を向ける・・・と、水面みなもは緑や藍の繊細な諧調と微妙な明暗を無限にたたえながら、きらめき、うねり、揺らめき、刻々と移り変わってゆく。じっとみまもっていると、生けるエメラルドの彫刻のごとき、結晶質の質感や奥行きが、心眼に映じてくる。

 私が暮らす広島から、まる1日かけ鳩間島にたどり着いた。その直後、ボートで沖へ出て、海の中へと静かに分け入った。そして、海を感じ、海と共振し、海の言葉を聴くべく、心身をクリアーに研ぎ澄ませていった。
 そうした行為は、私にとり神事であり巡礼に他ならない。地球生命のとおつおやはぐくんだ大いなる子宮たる海を、女神の神殿・龍宮とみなし、神聖で楽しい儀礼としてシュノーケリングを執り行なう。マスク、シュノーケル、フィンの3点セットは、新・三種の神器だ。
 何か(例えばシュノーケリング)をするにしても、どのような意図で取り組むかによって、そこでの体験はまったく異質のものとなり得る。

 これからお目にかける一連のヒーリング・フォトグラフは、観照者であるあなた方が、巡礼者である私の目を通じて世界を観る、という体験だ。ヒーリング巡礼の旅路において、私の注意を引きつけたもの、私が観たもの・感じたものなどを、武術で戦う際に使うのと同じ心身原理を活用しながら帰神撮影していった。
 帰神撮影とは、無念夢想の超意識状態にて写真撮影することだ。よく驚かれるのだが、私がこれまで使ってきた機材ではライヴビュー画面が水中でしばしば反射してほとんど役に立たず、自分が写そうとするものがそもそも画面に収まっているのか否かすら判別できない。構図を決めるとか、どこかにピントを合わせるとか、まったく不可能である。鳩間島巡礼を終えて帰宅し、撮ってきたデータを現像・編集して作品が出来上がってきて初めて、よくこれだけ撮れた(撮れる)ものだと、我ながら妙な感心の仕方をしたくらいだ。本当に帰神(神がかり)状態で撮っているんだなあ、と(呵々大笑)。ちなみに、データを現像・編集し、それらをスライドショー としてまとめる作業も、すべて瞑想的な深い受容の状態、すなわち帰神の態勢にて、神事として祈りに基づき執り行なっている。帰神スライドショー 、と銘打っているゆえんだ。

 鳩間島では、前述の通り、着いたその日からシュノーケリングのボートツアーに参加し、<龍宮巡礼>に臨んだ。
 まず最初に連れて行かれたのが、「サンゴがほとんど死んで瓦礫がれきのようになっている場所」とのことだった。サンゴはあまりない、が、いろんな種類の魚がたくさん見られる。そして運が良ければウミガメに出会えることもある、と。
 それでは、帰神スライドショーをどうぞ。部屋を暗くし、PC画面の明るさを中間に設定した状態で観ることを前提に制作している。Macのレティナ・ディスプレイとか4K対応テレビにPCを接続できる方々のため、高画質版も用意した。PCの機能やインターネット環境によってダウンロードに若干時間がかかることがあるが、ご了承いただきたい。待つだけの価値はある。
 時間と空間を超え、あなたも霊的な巡礼として鳩間島へ旅立ち、いのちの奇跡を・・・共に・・・目撃しよう。

帰神スライドショー1 『龍宮参道』

通常画質版 :
 
  
高画質版 :
 

<2020.12.01>