巡礼の地と波長が合ってくると、生命の様々な表現の根底にあるエッセンスのごとき実在と交感し、交遊することができるようになる。そういう話を第四回で、した。
 陸上の巡礼よりはやや難易度が高く、その新しい巡礼の世界観が秘める未知なる可能性について気づいて実践している人はまだまだ少ないようだが、陸の聖地と同様な神霊体験をすることが、海や川、湖などでも可能なのだ。
 水面下にも巡礼すべき聖地がある。地球表面積の4分の3を、水が占めている。この地球に暮らしながら、陸の聖地にしか目が行かず、水中の聖地を見逃すとしたら、「米を抱いて餓死するがごとし」、実にもったいないことだ。

 鳩間島の、サンゴ礁の豊饒を毎日のように、巡礼の心をいだいて訪れ、礼を捧げ、拝してゆくうち、心身がどんどん禊祓みそぎはらわれ、<水>になってゆくのがありありとわかった。そうなると人体というものは、他者にもハッキリわかるほど、複雑至妙に波打つようになる。

 7日目。その日のシュノーケリング・ツアーでは、このあたりで一番大きなテーブルサンゴがいくつか観られる場所とか、イソバナ(赤く美しく複雑に枝分かれしたサンゴの一種)が集まっている潮通しの良いスポットなどを、順に礼拝していった。

 帰神スライドショー1に登場したのとは別種の、クロガシラウミヘビが、露払いの螺旋舞を披露。このウミヘビは海という環境に完全に適応しており、エラブウミヘビのように産卵のため上陸することもない(幼蛇を水中で産む)。そのため、身体運動が非常に立体的だ。

 そして、ふと気づいたら・・・・・、このサンゴ礁に充ち満ちる生命感の、何という生々しさ! そして、神聖さ!
 あの、夜の山とか熱帯のジャングルなどでしばしば体験される、濃密な生命いのちの気配。それが、ひしひしひしと押し迫ってくる、ある種の圧力感。 
 全心身が、そして全世界が、超微細に振るえ、生命いのちの響き合いを精細にかなでる。
 観の目を使い、芸術/武術/呪術モードへと、意識を瞬時に移行シフト
 ・・・・・と、
 サンゴの群生風景が、眼前で奇跡的な変貌を遂げる。生きて輝く宝石で創り成された、壮麗な生命いのちの神殿。
 なぜか唐突に腑に落ちた。ここで南海の神々と出会うため、私は「呼ばれた」のだ、と。

 サンゴたちが、重大な決意を秘めた群衆のように群がり、何ごとかを伝えようとしている。
 帰神スライドショーを通じ語りかけられる、その声なき声、言葉なき言葉を・・・・、人類の一員としての自覚と責任と誇りをもって・・・、あなたも、どうぞ感じ・受けていただきたい。

帰神スライドショー6 『生命いのちの戦慄』

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 1~2℃の温度上昇、といえば世界人類の大多数が、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染を直ちに思い浮かべるのだろう。
 だが「海好き」なら、サンゴの白化へと想いを馳せるかもしれない。
 白化(Bleeching)は、1980年代始め頃から世界各地で観察されてきた現象で、私がちょうどシュノーケリングの楽しさを知った頃と合致するから、これまでずっと無関心ではいられなかった。
 ブリーチは漂白するという意味だが、海水温が1~2℃上昇すると、数週間のうちに漂白したみたいにサンゴが真っ白になり(共生してエネルギーを生産していた褐虫藻がサンゴの体内から排出された状態)、間もなく完全に死んでどす黒い藻に覆われる。疫病に侵されるみたいに、またたく間に広範囲に蔓延していって、周辺一帯のサンゴ礁が死滅するのだ。

 サンゴ礁は地球のために酸素を創るだけでなく、海水の二酸化炭素濃度を調節し、海を浄化し、幼魚たちに食物を提供し、様々な生き物の暮らしの場所となり、天然の防波堤となって陸地を守る役割も果たす。
 この30年間で、全世界のサンゴの半分がすでに失われたという。地球がどれだけ深刻な状況になっているか、よくおわかりだろう。
 サンゴという生態系の基盤が崩れれば、生命の秩序の大規模な崩壊が、地球規模で起こる。その影響は、地球の全生命に及ぶだろう。

「いや、白化は確かに困りものだけど、すぐ元通りになるから心配要らないよ。」・・・鳩間島在住者の多くが、シュノーケリング・ツアーの主催者も含め、そんな風に語っていた。事実、ご覧の通り・・・と。
 確かに、鳩間島にいるとそんな風に思えてくるのも無理はない。
 が、これまでご紹介してきたサンゴ礁の壮観は、あくまでも特別な、例外中の例外なのであって、八重山の他の海域では状況がまったく違うそうだ。

 帰神スライドショーを観照しながら、真っ白に漂白したように不自然なサンゴが妙に気になった方がいらっしゃるかもしれない。あるいは、ノーマルな褐色と真っ白がまだら模様になっていたり、黒い病巣に侵されたみたいだったり・・・・(下写真参照。各写真をクリックすると拡大)。
 それが「白化」だ。

<2021.01.01>