昨年秋に巡礼し、荘厳なサンゴ礁の景観に圧倒された鳩間島はとまじまは、西表島から船で10分ほどの至近距離にある。
鳩間島巡礼:2020』に描き出されたあの世界を是非この目で観たい、という同行者らの希望をれ、この日はシュノーケリング・ツアーに参加し(客は我々だけだった)、鳩間島を訪れることにした。

 あれからまだ1年も経っておらず、その後白化現象が起こったという話は聴いてない。天気も、まずまず。乗船時には結構強く雨が降っていたが、ポイントへ着いて海へ入る頃には、雲間から日が差し込み始め、世界が一気にぱあっと明るくなった。

 だが・・・、鳩間島の海にも、異変はやはり及んでいた。
 わずか9ヶ月前、あれほど見事に、一面に咲き誇る花畑のように広がっていたサンゴ礁が、まるで感染症にむしばまれてゆくように、あちこち藻に覆われて黒ずみ、満身創痍まんしんそういの痛々しい姿となってしまっている。
 これは、海水温の上昇による白化とは違う。昨年冬に沖縄を襲った大寒波が原因ではないか、と言う人もいた。

 同行者たちは、巡礼紀行トラベローグの世界を実際に体験できた! と感激の面持おももちだ。が、私の心は重く、晴れない。
 これまでの巡礼紀行シリーズとは打って変わり、この西表島巡礼記はダークな寂滅じゃくめつの調子が目立つな、とお感じになっている読者諸氏も少なくないと思うが、最初に記した通り、あの島では光と影の対比が鮮烈だ。自ずから、闇も深くならざるを得ないし、今は人類の裡なる暗闇と、私たち一人一人が向き合わねばならない時代ときなのだ。

 帰神スライドショーをご覧になればおわかりの通り、元気なサンゴの方が、まだ多い。そして、ここの海にも、生命力の光が強くみなぎっている。
 人類による気候変動の圧迫がやめば、サンゴ礁は直ちに復活するだろう。
 が、滅びの道も、またあり得る。

 改めて観ると、サンゴ礁というものは、波の化身みたいに波打っている。サンゴ礁全体が複雑な波紋の複合コンプレックスだし、一つ一つのテーブルサンゴの表面も、ゆらゆらうねうね波打ちまくっている。

サンゴとチョウチョウウオ
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 今回の海中帰神撮影では、魚だけに意識を集中するのでなく、魚にも背景にも同等の注意を注ぎ、海の中の世界を風景画や水墨画のように捉えることを試みてみた。

セグロチョウチョウウオ

帰神スライドショー DAY 5

通常画質版 :
 

 高画質版 :
 

 クマノミ三種と、この日、出合った。それぞれお気に入りのイソギンチャクがあるらしい。

ハマクマノミとタマイタダキイソギンチャク
ハマクマノミとタマイタダキイソギンチャク。
カクレクマノミとセンジュイソギンチャク
カクレクマノミとセンジュイソギンチャク。
ハナビラクマノミとシライトイソギンチャク
ハナビラクマノミとシライトイソギンチャク。ハナビラクマノミはあまり見かけない希少種

<2021.07.25>