Healing Discourse

ヒーリング・リフレクション2 第一回 アントロポセンの道

◎書斎の窓より遥かにみおろす早暁そうぎょうの広島湾。
 朝日の訪れがまもないことを告げる朱の拡がりが、瀬戸内の島々の山影さんえいをそっと柔らかに浮かび上がらせている。
 広島湾へ注ぐ太田川下流域に形成された三角州デルタ一帯が、貴重な宝石をバラバラッと惜しげもなくばらまいたみたいに、オレンジ、黄、赤、緑・・と、きらきらちかちか美しく瞬いている。広島市街地の明かりだ。あれらの明かりの一つ一つに、どんな暮らしや・人間模様が、あるのだろう。
 静かにみまもっているうちにも、あたりがだんだん明るくなってきて、空の星が一つ、また一つ、と色あせて消えてゆくみたいに、眼下の光景にちりばめられた光も徐々に輝きを失い始めた。

◎世界中の人々が、新型コロナウィルスによる混乱と不安の日々を送っている。
 普段私はテレビ、ラジオ、新聞、雑誌等を遠ざけた生活をしているのだが、出張指導の折りにホテルでテレビのニュース番組などを観るたびに、いわゆるオピニオン・リーダーとかコメンテーター、文化人、専門家といった人々の視野狭窄きょうさくぶりに驚かされる。
 あの人たちが言うような部分的なこと・表面的なことも、それは大切ではあろう。が、このたびのコロナ禍から人類が学ぶべき第一の教訓とは、「自然に対し、もっと謙虚になる」ことではあるまいか?

◎アントロポセン(Anthropocene)については、皆さん、すでにご存知のことと思う。
 人類の活動がついに地球規模の地質学的変化を引き起こすまでとなり、その新たな地質年代に対し提唱されている呼称だ(国際地質科学連合で正式な学術用語として近々認定される予定)。日本語で人新世(じんしんせい、ひとしんせい)、あるいは人類世。
 はるかな未来に地球を発掘する考古学者(それは人類ではないかもしれず、もしかしたら地球外の生命体かもしれない)は、我々が完新世と呼ぶ地層のすぐ上に、それ以前にはなかったファクター――放射性同位体の急激な増加、化学肥料由来の多量の有機リン酸塩と窒素、プラスティックゴミ、2倍に巨大化した鳥(鶏)のおびただしい骨、コンクリートなど――によって他の時代から明確に区分される地層をみいだすだろう。人類による活動のあかしであり、それらを含む地質年代がアントロポセンだ。ギリシア語とラテン語の合成で、「人類の時代」を意味する。
 1万6千万年前から続いてきた完新世が終焉を迎え、気候変動や生物の大量絶滅を伴うアントロポセンが幕を開けた。

◎完新世の安定した気候が、人類文明の発達を促した、とする説もある。
 地球規模の大変動の引き金を人類が引いてしまったアントロポセンにあっては、旧来のような価値観、世界観、哲学、道徳、倫理、宗教などは皆、文字通り「時代遅れ」の感が否めない。それらは実際、かつての力を失い、うまく機能しなくなっている。
 アントロポセンという「変化の時代とき」に、いかにして適応するか。それが今、人類全員に問われている。
 龍宮道とはこの、地球そのもの、あるいは生命そのものから発せられた切実な問いかけに対する、一つの応答だ。

◎2月22日をもってヒーリング・ネットワーク再興1周年を迎えたが、龍宮道らしい記念の品にと、ティタノボア・セレホネンシスの頭骨レプリカがフランスより届いた(オリジナルの化石は、南米コロンビアのセレホン累層から出土)。
 ティタノボアは、恐竜の支配が終わった約6千万年前の暁新世に生きた(知られている限り)史上最大の蛇であり、体長13~15メートル、体重1トン以上、胴体の一番太いところが直径1メートルはあったと推定されている。
 下の写真で、ティタノボアの上に比較用に乗せたのは、東南アジア産アミメニシキヘビの頭骨レプリカだが、この頭骨の持ち主が体長7.6メートルあったというから、ティタノボアのべらぼうな巨大さがよくわかるだろう。まさにドラゴン、だ。

ティタノボア

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◎ヒーリング・ネットワーク2の1周年を祝って、ティタノボアに続きいろんなお祝いの品が続々と届く、届く。
 マレーシア産の生ドリアンは、昨年、初めて日本に輸入され、タイ産に比べると高価なので一般に出回るのはまだ少し先のことになりそうだが、タイ産(モントーン種)にはない、独特の香りと濃厚な味わいは他に換えがたい。しかも樹上で完熟させた特級品であるからして、喜びのあまり「手の舞い、足の踏むところを知らず」、となるのも当然である。
 写真は、多種多様なるマレーシア産ドリアンの中でも最高峰とされる猫山王。これを以前は、中国語風に「マオシャンワン」と現地の人たちは呼んでいたが、最近は「ムサンキング」と読むのが主流らしい。一説によれば、ムサンはマレー語でジャコウネコを指すとのこと。
 上品な苦味が豊かで奥行きのある味わいを引き立て、ナッツのような風味がかすかに香る。

ドリアン

◎こちらは晩冬~初春に沖縄で収穫されるアテモヤ。この季節に内地へ持ってくると追熟しにくいことがこれまでネックだったが、私の書斎に置くと上手に追熟させられることがわかった。

アテモヤ

◎マンボウの「こわた」なるものを初めて食べた。マンボウの中でも特に美味とされる小腸の干物だ。三重県の尾鷲おわせ特産とのこと。

マンボウ

◎『ヒーリング・リフレクション1』で少しずつ距離を縮めていたマヤ嬢とコーンスネークのブラッドムーンだが、今ではこんなこともできるようになった。マヤは機嫌よさそうにごろごろ咽喉を鳴らし、ブラッドムーンも暖かくて気持ちいいのか、同じ態勢のままじっと動かない。

マヤと蛇
マヤ
オットちゃん

◎アントロポセンとは、地球規模の変化を起こせるだけの力を人類が獲得したことを意味するが、それだけでも驚きなのに、「アントロポセンはすでに急ぎ足で過ぎ去り、地球生命の進化の主役は今や人類からAIへと移りつつある」、と唱える急進的な説もある。
「地球そのものが意識を持つ1つの生命体である」というガイア仮説で一世を風靡したイギリスの科学者ジェームズ・ラブロックが、100歳を越えて唱えた「ノヴァセン」(新たな時代の意)だ。

<2022.02.22 土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)>