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高木一行
庭の端に立ち、かしわ手を打つ。
そして、合掌の形は保ったままで、宇宙大へと意識を拡げ、拡げきったらそれを反転させ、レット・オフ態勢へ入る。「身の丈」の内部にすっぽりきれいに隙間なく納まった感じが、生理的に起こる。
すると、腹の奥底からふつふつと煮えたぎるがごときエネルギーが湧き溢れてきて、全身を満たす。
視覚のモードを粒子化すると(観の目)、普段見慣れた庭の様子が、ガラリと一変した。
花も葉も、草も、皆、命の踊りを踊っている。私はそれを、ほとんど「精霊」と呼びたいくらいだ。
トカゲが日光浴にあらわれ、ハエは花芽の褥[しとね]にてセックスを楽しむ。
庭中、あちこちで生命力が湧き溢れている。輝いている。高揚したたまふり状態となっている。
一体これは何事なのか・・・?
まるで、庭全体が、わが家の歓びごとを祝ってくれているかのようだ。まあ、確かにわが家はこのところずっと良いこと続きではあるのだが。
あるいはそれ(庭の祝福)は単なる身勝手な思い込み・錯覚にすぎず、春から夏へと移ろっていこうとする今の時期にあたり、生き物たちの活動が盛んになっているだけのことなのか?
何にせよ、めでたいことだ。
ジャスミンのつぼみも、ほころび始めた。まもなく、鋭さを秘めた馥郁たる甘い芳香の波紋たちが群れをなして、あたり一帯を踊り渦巻くことだろう。
<2012.05.13 蚯蚓出>