スライドショー9-2 <煙精14 @沈香> 撮影:高木一行 2012.06.10

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ライナーノーツ

高木一行

煙精14 @沈香 撮影:高木一行 2012.06.10

 近年、アロマテラピーやハーブティー、ハーブを使った料理などが流行り、香りを意識したイベントが盛んに行なわれるなど、心の深層に届く香りの神秘作用が各方面で再認識され始めている。嗅覚は脳の神経回路に直結しており、視覚や聴覚など、分析的に情報を処理する他の感覚器官と違って、直接脳を刺激するといわれている。

 沈香(香木)は東南アジアのごく限られた地域にのみ成育する樹木の樹脂で、松やにのように樹皮の外ににじみ出るものではなく、樹の内部にしみ込んで蓄積されていく。
 適温で加熱すると、「その様やさしく、位[くらい]ありて優美なり」とか「宮人[みやびと]のごとし」などと形容される素晴らしい香りが漂う。
 世界で最も高貴な香りと呼ばれる理由は、実際に「聴いて」みれば直ちにわかる。

 室町時代の臨済宗の僧である一休宗純(1394~1481)は、「沈香の十徳」を以下のようにまとめている。
 いわく、
 感格鬼神(感は鬼神に格[いた]る)
 清浄心身(心身を清浄にする)
 能除汚穢(よく汚穢[おわい]を除く)
 能覚睡眠(よく睡眠を覚ます)
 静中成友(静中に友となる)
 塵裡閑愉(塵裡に閑を愉[たの]しむ)
 多而不厭(多くして厭わず)
 寡而為足(寡[すくな]くして足れりと為す)
 久蔵不朽(久しく蔵[たくわ]えて朽ちず)
 常用無障(常に用いて障[さわ]りなし)

 香道では、灰の中に炭火を埋め、その上に小刻みにした沈香を少量、そっと載せて、やがて漂い始める幽玄な香りを楽しむという。
 が、そんなお上品なやり方では肝心の「煙」があまり立たない。
 そこで、点火したチャコール・ディスク(炭の粉をディスク状に固めたもの)の上に、粗く刻んだ沈香のチップを山盛りにしてみた。香道家がみたら気絶しそうな粗っぽい使い方だ。
 すると、・・・・かぐわしい香りを孕んだ立派な煙が、どんどん立ち昇ってきて、やがて家中が沈香の香りで満たされるほどとなった。
 帰神撮影の結果はごらんの通り。

<2012.06.12 腐草為螢(ふそうほたるとなる)>