文・写真:高木一行
◎8月下旬は約2週間の休暇をとり、沖縄・慶良間諸島の阿嘉島で過ごしてきた。
実際には休暇どころか、巡礼&修業三昧の日々となってしまい、一人旅の旅愁を味わう暇すらなかったが、まあ、それもまた楽しきかな、だ。
◎2015年。無罪の証拠をいくら提出しても、法廷で(検察官&裁判官の仲良し癒着チームにより)次々と握りつぶされる空しい冤罪裁判の真っ最中、妻と共に訪れ、短い旅程の中、駆け足で巡礼した、その同じ場所(巡礼紀行『ケラマ・グレイス』参照)。
海流やその他諸々の条件に恵まれているのだろう、那覇市街地から高速船で50分程度の至近距離にあるとは信じられないほど、慶良間諸島では豊かなサンゴ礁が今も健全に保たれていた。2016年に世界規模で起こったサンゴの白化現象も、ここ慶良間ではあまり影響がなかったそうだ。
「自然が精気に溢れている時、人は幸せを感じる」、という安田喜憲博士(環境考古学者)の言葉が、強い実感を伴って思い起こされた。
『ケラマ・グレイス』に登場したウミガメたちも、「また来たのかい」とばかりに、元気な姿で鷹揚に迎えてくれた。
野生のウミガメと海中で(ごく短時間)出合うことはそれほど難しくないが、5分でも10分でもずっと一緒に泳げるような、原初の楽園の如き場所となると、全地球レベルで探しても極めて少ないだろう。私自身は、阿嘉島(それもある特定の場所)しか知らない。
警戒心が強く、普段はカメラを向ける前にさっと逃げ去ってしまう色鮮やかなチョウチョウウオも、毎日毎日海を訪れて巡礼し、海と完全に一体化したと感じるほどに瞑想意識が深まってくると、人なつこそうな快活な態度で近寄ってくる。
こちらへ突進してくる重戦車みたいなゴマモンガラは、フレンドリーなわけではなく、撮影されるのが鬱陶しくて威嚇しているのだ。警戒すべき相手であることは、目に宿る凶暴な光を観れば一目瞭然であろう。
卵を守っているメスならば、迷わず攻撃を仕掛けてくるから要注意だ。スクーバダイバーがフィン(足ヒレ)をかじり取られたとか、噛みつかれて重傷を負い病院に運び込まれたとか、物騒な逸話に事欠かないこの魚を、サメなどよりよほど危険、と断ずる人は少なくない。
今回の慶良間巡礼では、温暖化や白化現象とはまた別の、心ない観光客らによるサンゴ礁の破壊という問題にも直面することとなったのだが、それについては後日、トラベローグにて詳細にご報告する。
好天にずっと恵まれ(台風が近づき海が荒れた時でさえ、ポイントによっては波が穏やかで楽しく泳げた)、連日、海中帰神撮影しまくったため、撮ってきたデータが膨大な量となってしまい、それらを一気に現像・編集するとなると、これはもう「苦痛(苦行)」でしかない。今後ゆっくり、「楽しみ」ながら帰神フォトを整理してゆき、トラベローグ(巡礼紀行)の中で少しずつ発表してゆく予定だ。
今回のトラベローグはこれまでと趣向を変え、人々の心に海への憧れをかき立てるような、「龍宮の物語」を紡いでゆこうと思っている。魚たちの心や言葉を、あなたもきっと「感じ」られるようになるだろう。
◎慶良間巡礼(&修業)から帰還してすぐ、奄美大島から島バナナが届いた。
風通しの良いところに紐でつるしておき、黄色くなって黒い斑点が浮き出てきたら食べごろである。
日本にいる時はバナナをほとんど食べない私だが、この島バナナだけは別だ。沖縄の島バナナも悪くないが、奄美大島産は酸味と甘みの奥深い統合が素晴らしい。1本、また1本、と手を出すうち、写真の量くらいなら、1~2日であっという間に平らげてしまう。
<2021.09.08 草露白(くさのつゆしろし)>