◎「モルディヴ料理のイメージが湧かないのですが、実際はどんなものでしたか?」という質問が来ている。
食べ物に興味のない者(味覚や嗅覚が鈍い人間)は何をやってもモノにならない、とは他所でもよく聴く話だが、経験上確かに一理あるかもしれないと思う。
上の写真は、ある朝メインレストランのビュッフェから取ってきた一皿だ。炊き込みご飯の上がチキンカリー(少し辛め)、そこから反時計回りに、酢・塩・ライムに漬けた魚(半生)と野菜のサラダ、リハークル(黒っぽいペースト。魚の煮汁をハーブと共に煮詰めた調味料。パラオのワスと同様のもの)、ガーリック・ピクルス(茶色のペースト。スパイシーで刺激的な味でインドのピクルスと似ている)。ライスの上にかかっているのは、モルディヴ産の唐辛子スライス(激辛)やモリンガの葉の揚物(ふりかけのように使う)など。カリーといっても、いろいろ混ぜ合わせながら食べる独特のスタイルで、南インドやスリランカのカリーとは一線を画している。
モルディヴやスリランカの料理には、モルディヴ・フィッシュという調味料が欠かせないが、かつお節とそっくりで、日本のかつお節はモルディヴが起源という説もあるほどだ。
こちらは別の日の朝食(同じくメインレストランのビュッフェにて)。カリーはパンプキンカリー。トマトの向かって右に写っているのは、モルディヴ名物マスフニ。これが好きになって、レシピも抜かりなく習ってきた。
マスフニの作り方は極めてシンプルだ。缶詰めのツナ、ココナッツフレーク、タマネギみじん切り、レタスなどの葉野菜を細切りにしたもの(少々)、ライムの絞り汁。以上を、ヒーリング・タッチにて混ぜ合わせる。
好みでチリを加えてもOK。最後に塩や黒胡椒で味を調整。モルディヴ気分をさらに高めるため、カレーリーフの葉を加えるのもよい(乾燥した葉は香りが飛んでしまうので、生か冷凍ものを使う)。
余談だが、写真でトマトの左側にあるのは、フレッシュなココナッツをスライスしたもの。いかにもモルディヴらしい付け合わせだ。
この他、ガルディーアというシンプルなカツオのスープが代表的モルディヴ料理とされており、当然ながら作り方を習ってきた。カツオ、少量の刻んだニンニク、カレーリーフ、塩で作るシンプルなスープに、生タマネギや刻んだチリ、ライムを添えていただく。タマネギ、チリ、ライムは料理の材料として熱を加えず、出来上がったスープに好みの量を入れながら食べる点が独特だ。あるモルディヴ人は「カリーとガルディーアは両立しない(別々に食べる料理である)」と述べていたが、我々外国人は好きなようにさせてもらって構うまい。
モルディヴの市場にて、現地でしか手に入らぬ激レア食材(上記リハークルやモルディヴ製のカリー粉など)をいっぱいゲットしてきたので、帰国後はしょっちゅうモルディヴィアン・ナイトである。
◎モルディヴのリゾートで、日本でも売っている炭酸飲料水を注文した際のこと。
一口飲んで、おやと思った。馴染の味とは違うのである。レストランの照明が暗めで気づかなかったのだが、よく観るとライムが一切れ浮かんでいる。
そういうちょっとした工夫で、こんな風にまったく違った飲み物に変わってしまうのか、と感心した瞬間、心と体の奥底に巣くっていた重さ、というか封印のようなものが、ふわりと溶けて消え去る感覚を覚えた。それと共に、理不尽な冤罪で放り込まれた刑務所生活(4年半)で失ったと感じていた繊細な味覚・嗅覚が、ゆっくり戻ってき始めたではないか。
まるで、荒れ果てた大地が恵みの雨によって奇跡のように花々で覆い尽くされるように。
◎アラカルト料理でロブスターづくしなども注文してみたが、モルディヴ式のロブスター料理とはいかなるものかとの期待は見事に裏切られ、ビスクだのラビオリ、テルミドール(下写真)といった、どこにでもあるありふれた品ばかりで、少々がっかりである。ロブスター(伊勢エビの仲間)なんて、そもそも大して美味いものじゃないのに、写真のようにチーズなんかをいっぱいかけてしまったらすべて台無しだ。
◎モルディヴ巡礼より帰還して1月以上が経ったが、いまだに巡礼成功を祝う祝福の品がしゅっちゅう届けられ、ほぼ毎日がフェスティバルという極楽(≒自堕落)生活を送っている。
トラベローグ用の帰神フォトを現像・編集し、帰神スライドショーを制作する作業は夜間、部屋を暗くして行なうので、昼夜逆転の夜行性生活がスッカリ身についてしまった。これもそろそろ反転させねば、と思い始めている今日この頃である。
<2022.10.25 霜始降(しもはじめてふる)>