Healing Discourse

ヒーリング・リフレクション3 第十三回 ワイサック

◎毎年5月の満月の夜、世界中の仏教徒たちがインドネシア・ジャワ島中部のボロブドゥール寺院へ集い、ワイサックと呼ばれる大祭を盛大に執り行なう(今年のワイサックは5月25日)。
 ブッダ生誕を祝う、という顕教的な目的と同時に、時間と空間を超えブッダが説法する場に参入するという密教的側面が、ワイサックにはある。
 昔、夢見の術を盛んに修していた頃のことだ。ある夜、いつも通り意識的に夢の世界へと分け入ったところ、期せずしてブッダ説法の現場と出くわしたことがある。
 その時は何の理由もなく、「あそこで法を説いているのはゴータマ・ブッダその人である」と直感的にわかったのだが、後でその日がちょうどワイサックにあたっており、ブッダが時空を超えて人々に語りかける日とされていることを知って驚いた。
 当時、ブッダにも仏教にもあまり興味はなかったのだが。

ボロブドゥール

世界最大の仏教遺跡、ボロブドゥール。クリックすると拡大。

ボロブドゥール
ボロブドゥール
ボロブドゥール

◎長崎からびわ(ハウス栽培)が届いた。今シーズンは冬の大寒波で露地物はあまり期待できないかもしれないそうだ。

びわ

◎駿河湾のシラス漁が解禁となった。酢醤油におろし生姜で美味しくいただく。各地で獲れる生シラスはそれぞれ独自の風味があって甲乙つけ難いが、私は駿河湾産が一番好きである。上品なほろ苦さと鮮烈な海の香りが口中ではじけ、軽やかにダンスする。

シラス

◎40年くらい前、マレーシア西海岸のバガンスライ(ペラ州)で、中国(福建)系移民の友人宅に1週間ほど滞在していた時のこと。ある日、近所へ買い物に出かけた友人が、小さな柿を濃い赤紫色に染めたような見慣れぬものを大量に買い込んできた。

マンゴスチン

 その家の子供たちがわっと群がってきて、うれしそうに一斉に食べ始めたのだが、勧められるまま見様見まねで分厚い外皮を手で割ってみると、中から出てきたのは武骨な外観からは想像もつかないような白い繊細な果肉だ。

マンゴスチン
 一口食べて言葉を失った。他に比べようがない、爽やかな酸味と上品な甘さの絶妙なバランス。ジューシーさの中に、ねっとりした食感も含まれている。

 指を赤紫色に染め、子供たちと一緒に夢中になってむしゃぶりつきながら、「美味しい、凄く美味しいよ・・・一体何だい、これは!?」と、ほとんどあえぐように尋ねたら、「サンチュ(山竹)」という答えがさりげなく返ってきた。
 帰国後あれこれ調べ、サンチュとはかの有名な果物の女王・マンゴスチン(Garcinia mangostana)にほかならぬとわかった時は、相当な衝撃を感じた。
 かつて英領マレーシアを訪れたヴィクトリア女王は、「かくも美味なるものが我が領土にあるというのに、(当時は保存や輸送の技術が未発達だったため)普段食べられぬのはまことに残念・無念」と激賞したそうだ。が、その果物の女王があんな地味で目立たない外見をしていて、これまで市場などで何度も目にしていたはずなのに全然気づくことなく素通りしていたとは・・・。
 まったくもって、不覚である。
 上掲写真は、最近龍宮館に届けられた生マンゴスチン。これくらいの量だと、1日で食べ尽くす。

<2023.05.02 牡丹華(ぼたんはなさく)>