Healing Discourse

ヒーリング・リフレクション3 第四十一回 祝・新春

◎祝・新春(by 高木シータ&高木ラ・ムー) 

シータ

クリックすると拡大。以下同様。

シータ
ラ・ムー
シータとラ・ムー
シータとラ・ムー

◎わずかな元手で多くの利益を得たり、ちょっとした贈り物をして過分な返礼を受けることを、「海老で鯛を釣る」と言うが、瀬戸内では実際に生きた海老を餌に鯛を釣るのである。その時使われるのが、サルエビ(Trachysalambria curvirostris)だ。

サルエビ

 だし汁に醤油、酒を加え(薄味が吉)、海老を投入してさっと熱を加えれば、瀬戸内の冬の風物詩サルエビの煮付けができあがる。そのまま丸ごと食べるが、身や海老味噌の風味がぎゅっと凝縮して混ざり合い、クルマエビや伊勢エビを食べるのとは違った美味しさだ。
 材料としてあまり大きなもの(といってもせいぜい体長10センチ強にしかならないが)を使うと、食べる際に頭のトゲなどが口の中に突き刺さることがあるのでご注意。そんな時は、唐揚げにしても美味しい。

◎豚のモツ(小腸)を使ったシンプルな料理2品。昨年末に「くどく・重い味」をさんざん味わったためか、材料費数百円程度のこういう素朴な食べ物が、今は美味しく感じられる。

豚モツ、ニンジン、大根、ちぎりコンニャクの味噌煮込み

豚モツ、ニンジン、大根、ちぎりコンニャクの味噌煮込み。

豚モツとニンニクの芽の味噌炒め

豚モツとニンニクの芽の味噌炒め。味噌の種類、味つけは当然変える。

◎一般に市販されているシシャモ(カラフトシシャモ)は、本物のシシャモではないのだそうだ。学名を観ると、本シシャモ(Spirinchus lanceolatus)はシシャモ属、カラフトシシャモ(Mallotus villosus)はカラフトシシャモ属で、同じキュウリウオ科に属すが科内の位置は近いとは言えず、となれば食味も違って当然だ。
 それでは本物のシシャモとはいかなるものか、北海道から取り寄せ、実際に味見してみた。

シシャモ

 なるほど、普通に売っているシシャモ(カラフトシシャモ)とは、姿も食感も味も、確かに違う。上品で繊細である。市販のシシャモの9割以上がカラフトシシャモらしいが。

◎広島の食べ物といえば「牡蠣」を連想する人が少なくないと思うが、いろんな変わった牡蠣料理に、今後はチャレンジしてゆきたいと思っている。とはいえ、牡蠣というのは毎日食べ続けるようなものじゃないので、集中的な研究はやめておき、長いタイムスパンでゆるりと取り組む所存だ。写真は、ニョクマムを効かせたインドシナ風牡蠣オムレツ。
 ちょっと薄味にしすぎた。もう一工夫必要である。

インドシナ風牡蠣オムレツ

◎瀬戸内の冬の味覚といえば、ナマコも忘れてはなるまい。ナマコを食べる習慣がある地方ではどこも同じと思うが、赤ナマコ(Apostichopus japonicus)と青ナマコ(マナマコ  Apostichopus armata)の2種類がある。赤は岩場、青は砂地に生息しており、赤の方が柔らかくて癖がないため高級とされている。

イノシシ肉

赤ナマコのポン酢風味。柚子の皮ともみじおろし、青ネギ小口切りを添えた。磯の風味と独特の食感がたまらない。

◎友人が郡上八幡の新鮮なイノシシ肉を贈ってくれたので、牡丹鍋をこしらえた。
 沖縄の琉球イノシシを含め(沖縄の人はイノシシ肉を刺し身でも食べる)、全国各地の自慢のイノシシ肉をこれまでいろいろ味わって来たが、郡上八幡産が群を抜いて美味しく感じられる。マツタケや栗を食べて育つとされる有名な丹波産よりも、もっと美味だ。

イノシシ肉

 なぜそんなに違うのか、肉があまりに新鮮だったので、切れ端を生のまま味見してみた。・・・甘い。肉が甘いというのは変な表現かもしれないが、確かに甘いのだ。脂肪の部分も上品で爽やかで透明感があって、豚肉にありがちなくすんだ臭みなどのマイナス要素がまったくない。
 なぜここまで美味しいのか、贈ってくれた友人に頼んで、購入した食肉店に直接尋ねてもらったのだが、以下のような回答が電子メールで届いたという。
「考えられる理由としては、猪を仕入れる段階で、十分な吟味をするように気を使っております。また、下処理の方法について猟師には、こちらから色々と要望を伝えています。さらに、脂身や肉質の良否は、餌となる山の木の実の豊富さに大いに関係すると考えております。十分なお答えになっているかわかりませんが、以上のところです。」
 ・・・郡上八幡のイノシシ自慢が延々展開されるかと思いきや、何とも謙虚な答えだ。まあ、それだけ自信があるということだろう。郡上八幡のイノシシが美味い、というよりも、この食肉店で購入するイノシシ肉が美味い、ということなのかもしれない。

 だし汁の作り方は以下の通り。
●たっぷりの栗甘露煮を汁ごと、ハンドミキサーでペースト状にする。けちけち遠慮せず、甘すぎるのではないかと心配になるくらいたっぷり使うのがポイント。
●白味噌、赤味噌、もろみを加え、ニンニクすり下ろしと生姜すり下ろしを加えて、さらにハンドミキサー。
●酒、みりん、(好みで)砂糖を味見しながら加え、味にさらなる複雑さと奥行きを出す。砂糖は黒砂糖など、コクのあるものがいい。
●山椒の粉を(味見しながら)多めに加える。過ぎたるは及ばざるがごとしであることは言うまでもないが、これもはた目からは大丈夫かと思うくらいしっかり加えた方が美味しくなる。もちろん、味見しながら少しずつ、だ。
●以上を、昆布で出汁を取った汁で溶き広げる。これでだし汁は完成だ。ヒーリング・アーツ修養者は、ヒーリング・タッチや気合術を駆使しながら調理すれば、出来上がった料理の「生命感(活力、活気)」がまったく異なるものとなる。気功の世界では有名な話だが、一流の料理人は皆、「手から驚くほど気が出ている」のだそうだ。

牡丹鍋

 イノシシ肉には笹掻きごぼう(あく抜きは軽く)が欠かせないと私は前々から感じているのだが、白菜、各種茸、焼き豆腐、糸コンニャクなど、好きなものを投入し、雪見しながらいただく。
 たちまち全身から熱汗が吹き出し、野生の生命力が満身を楽しげに巡る。
 残っただし汁で、うどんや雑煮を作るのも美味しい。

◎冬場にみかんをたくさん食べる瀬戸内人は、体(特に掌など)が「黄色く」なることがある。柑皮症かんぴしょうという医学用語までご丁寧につけられているらしいが、みかんに多く含まれる色素(カロテノイド)が沈着しただけのことで、同じように体が黄色くなる黄疸(肝臓の病気)と違って白目は黄色くならない。しょっちゅう柑皮症になっていた経験から言うが、健康には何の問題もなく、みかんのシーズンが過ぎたらすぐ治まってしまう。
 昨年末から、いろんなみかんを試しているのだが、各種類につき5キロの箱買いなので、相当な量のみかんを食べ続けてきたことになるが、いまだ柑皮症になっておらず、掌がちょっと黄色っぽいかも、という程度である。

五つ星みかん

広島の有名なみかん産地・瀬戸田のみかん(温州うんしゅうみかん)。これは、元々高品質のものをさらにセレクトした広島のトップブランド「五つ星みかん」である。甘さと酸味のバランスが絶妙。

真穴みかん

愛媛みかん御三家の一つ、真穴まあなみかん。瀬戸田みかんとはまた違う、甘さと酸味のバランス、そしてとろけるような果肉の食感が特徴だ。

紅まどんな

こちらも愛媛みかん御三家で、愛媛のオリジナル柑橘・紅まどんな。ちょっとマニアックな柑橘公式について述べると、まず、「三保早生×クレメンティン=南香」、「清見×温州みかん=天草」で、さらに南香×天草=紅まどんな、となるのだそうだ(知的には理解できるが体感的にはまったく理会できない)。栽培は愛媛県内に限られているという。毎年愛媛で開かれるマーマレードの祭典といい、柑橘に注ぐ愛媛県人の情熱には頭が下がる。
 瀬戸田、真穴、紅まどんな、と順に断面を比べてゆくと、外皮がだんだん薄くなってゆくのがおわかりと思う。紅まどんなは特に薄くて、おまけに中身のじょうのう膜(果肉を包む白い薄皮)も薄いため、皮をむいている最中にじょうのう膜がどんどん破れ、果汁がぽたぽたしたたり落ちてくる。普通のやり方では上手にむけないため、皮のまま丸ごとスマイルカットするのが愛媛式であるとか。食べるために一手間いるが、味はとてもいい。食感が「ゼリーのごとし」とも聴いたのだが、私が試したのはSサイズの小粒だったためか、ゼリーとまではゆかないと感じた。が、ふるふるした独特の食感が気に入る人は多いかもしれない。

ゴールド千両

愛媛みかん御三家そろい踏み。トップブランド「日の丸」の、さらに特秀ランク「ゴールド千両」・・・だそうだ。各種類を同時に食べ比べないと正確なことは言えないが、甘さとスッキリしたコクが特徴と感じる。・・・しかし、これだけ蜜柑を食べているのに一向に「黄色く」ならんな、と思って太陽光の元で改めて掌をチェックしてみたら、結構黄色くなってきていた(呵々大笑)。龍宮館の室内灯を電球色にしてあるので、その光の加減でこれまで黄色さが目立たなかった、ということらしい。

<2024.01.01 元旦>