Healing Discourse

ヒーリング・リフレクション3 第四十回 とち狂ふて、後、安息あり

◎「尻腰しっこし」は元々、度胸、意気地、根気などを意味した言葉で、すでに死語となって久しいようだ。周りの人に尋ねても、聴いたことがないと誰もが言う。
 心身修養における探求の過程で、「これこそ、古人が尻腰と呼んだものではなかったか」とリアルに感じられる「現象」が自分自身の身体を通じ顕われるようになり始めたことについては、本ウェブサイトでその概要をご報告してきた。
 その尻腰の効果(効能)の一端なのか、これまでの人生で一度として年内に完了したためしがなかった大掃除も10月中にすでに終えてしまった。清掃、片づけ・整理などの単調な労働を延々続けても、疲れたり飽きていやになったりするということがないため、作業がどんどん進んでしまうのである。
 同じことをやっても、効率がもちろん違うし、その後の心身の疲れ具合が圧倒的に異なる。試しに、ちょっとした体の使い方(体を伸ばすとか捻る、など)において尻腰を覚醒させれば、その場で直ちに全身のゲシュタルト(形状、形態)が変わる。身体のパーツがいったんバラバラになって組み立て直され、遥かに高性能にチューンナップされるような変化が、ごく短時間のうちに起きる。

◎大掃除も終わったし、時を同じうして長年取り組んできたヒーリング・ネットワークの活動にも一区切りついて、年末なのにすることが特になくなってしまった。昨年の年末にも似たようなことをリフレクション2で述べていたような気がするが、私の場合、時間ができたからといって料理の研究などをいそいそと始めてもろくなことにならぬ・・のかもしれない。

ソロモン・ガンディー

 ジャマイカから送られてきたソロモン・ガンディー。
 実物を初めて観た。スモークしたニシンを細かく刻み、唐辛子やスパイスなどで味つけした「ピクルスパテ」なるもので、現地ではクリームチーズと混ぜ合わせ、クラッカーと一緒に前菜として出されるのだそうだ。
 実際にそうやって食べてみたが、・・・何しろ、変わった味だ。新しい言葉(言語)でも作らないことには表現も伝達もできそうにない、そんな未知の「味」というのは確かにあるもので、私は好きになったが、ではしょっちゅう食べたいかといえば、そうでもない。時々、忘れた頃に食べられればそれで充分、という感じである。
 先日、相承会で龍宮館に滞在した者たちにも試食させたところ、かなり変わった味にも関わらず、皆、「まんざらでもない」とか「悪くない」といったリアクションだった。
 ジャマイカでは、ソロモン・ガンディーをシーフードの調味料としても使うと聴き、鮭とブロッコリー、マッシュルームのクリームシチューに隠し味程度に加えてみた。

シチュー

 ・・・なるほど、ヨーロピアンでもアジアンでもアフリカンでも中東風ミドルイースタンでもない、独特の味わいと香りが、シンプルなクリームシチューの裡に備わった。料理の「味」を構成する要素に新しいファクターが並列的に加わったというよりも、従来の味の要素間にあったつながり、そのつながり方が新しいものへと変わった、そんな感じだ。
 そうか、調味料の「調」とは、こういう意味だったのか、と初めて気づいたくらいだから、料理における私の「素人」度がよくおわかりになると思う。

「12L」という超特大サイズのタラバガニ(北海道産、冷凍)が手に入ったので、いろんな料理に使うべくあれこれ材料を取りそろえ、楽しみに待ちつつ冷蔵庫内でじっくり解凍した。

タラバガニ

タラバガニの12Lなんてサイズがそもそもあるということが、驚きである。ちなみにタラバガニはカニではなく、ヤドカリとかヤシガニの仲間。

タラバガニの爪

タラバガニとしては、爪もかなりの大きさだ

 ヒーリング撮影を終え、むき出しになった身と、ちょっとヒーリング・タッチしてみた・・・ら、期待に反し何だかスカスカしている。こんな素敵な外見なのに。
 実際に味わってみて、触覚が欺いてないことがよくわかった。ぱさついていて味も貧相、いいところがまったくない。すべての脚も爪も、脚つけ根の胴の身も、全部味見したが、どれも印象に残るものがなかった。それを使った料理は必然的にすべて撃沈。料理を作る手もすぐ止まった。食材がダメなら、それを使った料理が美味しいものとなるはずがない。
 近所のスーパーで10分の1以下の値段で安売りされているロシア産タラバガニSサイズの方が、ずっとまともな味である。同じ料理を作っても、はるかに美味しくできあがるだろう。
 心の中を寒風さむかぜが吹き抜けるような、冷え冷えとした気持ちにもなろうというものである。

 このままではいけない、と強く感じ始めた時、丹後半島産といういかにも高級そうな松葉ガニ(冷蔵)が贈られてきた。

松葉ガニ

 最高の状態に茹でてあるのだから、そのまま食べればよいものを、変にやる気を出してカニ寿司にしようなどと張り切ってしまったのが間違いの元だった。
 そもそも、見様見まねで寿司を握ったことが、これまで一度しかない(少し前にご紹介した島寿司)。
 カニの脚やハサミから寿司用に身をきれいに外すのが、まず難しかった。すぐバラバラ崩れてゆく。そして軍艦巻にチャレンジすべく、細長く切った海苔を握ったシャリに不器用に巻きつけたまではよかったが、蟹味噌の水分が多過ぎたのだろう、スプーンですくってそっと置いた瞬間、海苔がみるみるクシャクシャみじめに、しなび始めたではないか。
 それで肝心の味だが・・・感動が全然なかったね(呵々大笑)。スーパーで売っている出来合いの安い寿司の方がマシ、という情けない有り様である

カニ寿司

 まず、寿司の基本を修得する必要があるとわかり、スーパーの魚屋でネタに使えそうな白バイガイと赤エビを買ってきた。
 しかしながら、寿司といっても素人が何も分からず実験的に真似してみた程度のものなので、写真撮影中に白バイガイがずり落ち始める始末。皆(他の貝)と一緒に笑い転げているうち、ずっこけた(ずり落ちること)、といわんばかりの風情ふぜいではないか。何だか、思わず一緒に笑ってしまいそうになるくらいだが、皆さんも是非、写真をクリックし拡大して「観て」いただきたい。貝たちが本当に笑っているのが感じられるはずだ。エビたちは礼儀正しく、チャックを閉めた唇みたいに沈黙を保っている。ヒーリング料理とか生命力マナを込めるとか、私が述べているのは、決して誇張とか象徴などではない。

寿司

 エビと貝は当然ながら食感(硬さ)も味の密度も違うが、そういうことを無視してシャリを全部同じ硬さに握ったため、ネタとシャリのコンビネーションが不自然で、いかにも「合ってない」感じに仕上がってしまった。
 寿司というのは、やはり奥が深い。そのことがわかっただけで、寿司研究シリーズはわずか3回であえなく終了である。
 寿司の握り方くらい、今どき、気軽に習える料理教室などがあると思うのだが、実際に習うとしたら真剣かつ徹底的に取り組みたいし、何よりもまず、自分が心の底から尊敬できる腕前を持つ人に師事したい。ところが、そういう素晴らしい寿司職人が握る寿司屋が龍宮館近くにもあるけれど、いつもお忙しそうで、客としてちょっとしたことを質問するのでさえはばかられる。それだけの人が「絶対素人」の私なんかを相手にしてくれるはずもなく、「弟子入り」を願い出るなど、夢のまた夢なのである。

 気分を取り直し、生のボラ子(ボラの卵巣)を、一部を生カラスミにしてご飯と一緒にいただき、残りはカラスミを初めて自作することにした。

ボラ子

 塩漬けにし(1~2週間)、塩を抜き(1日)、日本酒に浸け(1日)、天日干しと陰干しを繰り返しつつ乾燥させた(10日前後)。その成果が、以下の写真である。

カラスミ

 写真を観るたびに笑ってしまう。
 普通の干物と同じように網の上で干したため、でこぼこゴツゴツのひどい見た目となってしまったが(本来は板を使うようだ)、毎日ヒーリング・タッチしながら塩加減や干し具合を調整したため、市販品にはない半生ソフトタイプに仕上がって、味や食感は大満足である。あまりの美味しさに、あっという間になくなってしまったけれども。

 下写真はボラ子と一緒に送られてきた希少部位のボラへそ。胃の一部で、鶏で言うと砂肝に相当するものらしい。試しに干物にしてみたところ、確かに食感も風味も砂肝に似ていて悪くはないが、干すとかなり硬くなってしまい、薄くスライスしないと食べにくかった。

ボラへそ

 愛媛県で年に一度開催されるマーマレードの祭典、「ダルメイン世界マーマレードアワード&フェスティバル」 日本大会で、金賞に輝いたというマーマレードを味見してみた。

マーマレード

 上掲写真で、夜光貝の皿に載っているのは、「果物スイーツの第一人者」の手になる「せとかとカラマンダリンのマーマレード」。
 何種類かのパンで試してみたが、特に何の感動もなかった。せとか(品種名)やカラマンダリンが好きで各々の特徴や違いがわかり、栽培植物としての来歴や関係性まで知っているような人にとっては、この味とあの味がどんな風に響き合って、などと違いを楽しめるのかもしれない。本シリーズで以前述べたことがあるように、私は果物好きだが柑橘類にはあまり詳しくないのである。

 上記マーマレードの作者はアントルメグラッセ(氷菓)の第一人者でもあるという。そんな凄いシェフがこだわり抜いて作ったというモンブランアイスケーキを注文した。

モンブランアイスケーキ

 時間と手間をかけ丁寧に作りあげた6種類ものパーツをいかに組み合わせるかにも、熱い思いが込められている・・・のだそうだが、シェフの想いが過剰にこもり過ぎたか、何だかわけがわからずごちゃまぜになってしまって単にくどさが増しただけとしか、私には感じられなかった。相当高価な品だったが、何とか頑張って4分の1くらい食べたところで、それ以上はもうどうやっても体が受け付けなくなり、残りは全部捨てた。
 私はこのシェフの批判をしているわけではないから、氏名も店名も記さない。私と違って、美味しい・素晴らしいと感激する人たちだっているはずで、さもなければ大きな大会で金賞を受賞するなど不可能であろう。
 大好きな人間がいるような菓子だからこそ、その対極として大嫌いな人間がいるのも当然のことなのだ。私はたまたま、その反対極に当たったに過ぎない。

「とち狂ふ」というのは、ああいうことを言うのだろうと、今になってそう思うのだが、高級住宅街として有名な鎌倉山の・人呼んで「スイーツ通り」にて、日本で一番高い究極のチーズケーキが売られているという噂を聴きつけ、早速注文した。
 届いた品を宅配便の配達員から受けとった瞬間、その「重さ」にまず驚いた。ちょっとしたサイズのスイカを抱えたような感じ、といえばおわかりだろうか。開封してみると、直径20センチ弱なのにズッシリと重い。
 調理器具がそのまま使われている武骨な外観も、ある意味で凄いが、ざっくり切ってちょっと味見したら、凄まじいばかりの「重さ」だ。

チーズケーキ
チーズケーキ

 美味いとか不味いという前に、とにかく「重い」。重量も重いが、食感も重く、味も重い。食後、階段を上り下りする際に、胃が重力に引かれて重いと感じる、そんな妙な状態を初めて経験した。
 こちらも、残りを全部捨てた。

 尻腰を改めて入れ直し、ホットチョコレートをこしらえた。材料は、ヴェトナムのビーントゥバー・チョコレートメーカーMAROU(マルゥ)のカカオパウダー、牛乳、キビ砂糖。弱火で温めながら、泡立て器で真心込めつつひたすらシェイクする。

カカオパウダー

 Netflixの人気番組『Somebody Feed Phil(腹ぺこフィルのグルメ旅)』は、著名なプロデューサーであり「The nicest man in the world(世界最高のいい奴)」フィリップ・ローゼンタール氏が「食」「人」「文化」をテーマに世界を旅する物語だ。ユダヤ人でユダヤ教徒のローゼンタール氏が、ユダヤ教徒は元来食べてはいけないはずの豚肉やエビ、カニ(鱗のついてない魚介類はすべてNG)などを豪快に食べまくる様は痛快としかいえないが、誠意を持って人々と心を通い合わせてゆく態度には深く共感できるし、ローゼンタール氏と家族ぐるみで交流がある世界トップクラスの錚々そうそうたるシェフたちも続々登場して、ただ面白おかしいだけの一過性エンターテインメントで終わらない多層的な世界観を有する希有な番組だ。私は関連本も買い、併せて楽しんでいる。

Somebody Feed Phil

©Simon Element

 そのローゼンタール氏がヴェトナムを訪れた際、マルゥ本店で出されたホットチョコレートを試しながら目を輝かせていわく、「ぼくはアンジェリーナ(パリのサロン・ド・テ)のホットチョコレートを気に入っているんだけど、こちらも素晴らしい!」と。
 ユダヤ人は「つて」というものを大切にする、とよく言われる。「つて」とは、家族や親戚、知人などの人間関係を始め、希望や目的を実現するためのあらゆる手段や手がかりなどを指すのだろう。大きなものごとは何世代もかけ実現してゆけば良いという考え方をユダヤ人はするとか、これまで知識・情報としてだけ知っていたことがらを、上記番組(現在シーズン6までが制作されている)を最初から最後まで通して何度も観ることで、「なるほど、こういうことだったか」と腑に落ちて実感できたのは大きな収穫だ。
 近~現代において、人類の世界観を根底から変えるような発見をなした人々について改めて思い起こしてみると、皆ユダヤ人であることがわかる。
 神が人間を創造したとの強固な思い込みを覆してしまったチャールズ・ダーウィン。
 人間の心という未知の領域に新たな光を当てたジークムント・フロイト。
 国際政治や思想に多大な影響を与えたカール・マルクス。
 超微細な物質の根源に秘められた莫大なエネルギーを解放したアルベルト・アインシュタイン・・・。
 永きに渡る苦難と激動の歴史をしたたかに生き抜いてきたユダヤの民の叡知は、アントロポセン(地球的な大変動の時代)をこれから生き抜いてゆこうとする世界を導く光の一つだ。

 尻腰は偉大なり。気分がだらけて体も何だか協調を欠いて重いと感じられるような時、尻腰を覚醒させた瞬間、心身に一本、ピーンと筋が気持ちよく通る感じがして、倦怠感がさっと吹き払われ、やる気がもりもり出てくる。
 そうなると、自然に運気までが向上するのだろうか。マルゥのホットチョコレートで心の寒さも薄らいできて、冷水でも浴びようかという高揚した気分になったのとちょうど符節を合わせたかのように、マレーシアのフレッシュ・ドリアン(猫山王)が2つ、魔界からの贈り物としてうやうやしく届けられた。マレーシアのドリアンは初夏頃が旬だが、年末年始に「スモール・シーズン」と現地で呼ばれる第二の収穫期がやってくるのだ。

猫山王

 戸外ではたくさんの雪片が冷たい風に乗ってひらひらはらはら踊り狂っているが、全室床暖房の龍宮館内部はうららかな春のごとき温もりだ。
 雪見を楽しみながら、大ザルに盛った最高級ドリアンの香気を放つ高貴な実をヒーリング・タッチでそっと柔らかくつまんでワイルドにむしゃぶりつき、濃厚な熱帯の甘さを彩るビターなキャラメル風味を徹底的に味わい尽くす。
 よろしい! 楽園シャングリラ気分がさらに高まってきた(呵々大笑)。

 生ワタリガニを使った韓国料理の精華(すぐれてうるわしいもの)、ヤンニョムケジャンとカンジャンケジャン(写真向かって右)。

ヤンニョムケジャンとカンジャンケジャン

 ヤンニョムケジャンの作り方は、『ヒーリング・リフレクション2』第三十八回参照。
 カンジャンケジャンは、玉葱やニンニクなどを入れた韓国の醤油(カンジャン)に、新鮮なワタリガニを浸けて熟成させる。酒は使わないが酔蟹スイシエの一種といえるかもしれない。

 普段ほとんど食べない蕎麦が、例年なぜか年末になると美味しく感じられるようになる。写真は、月見ざるそば。うずら卵の黄身は最後近くまでそのままツユに浮かべておき、月見を楽しみながらそばを味わう、そういう趣向である。月(卵)を2個使えば、2つの月(フォボスとダイモス)を持つ火星の年越し蕎麦となる。

月見ざるそば

 大晦日(New Year’s Eve)を祝う習慣は、よその国ではあまり聴かない。
 いつものように、年末のスペシャルな祝福を、地球調和の祈りと共に、遠隔ヒーリング作用を込め、愛読者諸氏へお届けする。
 聖なる祝福を、あなた方一人一人へ!!

<2023.12.31 大晦日>

※本連載(『ヒーリング・リフレクション3』)は年末で終了とせず、来年春分頃まで継続の予定。