Healing Discourse

龍宮道メモ 第十一回 胸郭の和らぎと腰腹同量の力

2023.09.17

 実際に自ら体験しないことにはなかなかわかっていただけないのだが、我々が「胸郭が和らぐ」という言葉を使う時、それは本当に胸郭がグニャグニャに溶けたかのように波打つ状態を指す。

動画34 『胸郭の和らぎ その深奥』
撮影:2023.05.04 於:天行院

フルハイビジョン画質 04分59秒

2023.09.23

 私はあまり動いてない(ように見える)のに、受け手が激しく波打つのは一体どうしたわけか、とよく尋ねられる。中国武術のいくつかの流派ではこの現象を明勁と暗勁という言葉で説明している。
 明勁とは体内の流動・循環がハッキリ外側に表われている状態、暗勁はそれが洗練されて身体内で処理され、どんな作用が働いているのか外側からはわかりにくくなった状態のことだ。
 動画後半では、胸郭の和らぎを元に自由自在にわざを運用してゆく。

動画35 『続・胸郭の和らぎ』 撮影:2023.05.04 於:天行院

フルハイビジョン画質 07分00秒

2023.09.27

 龍宮道の根幹である腰腹同量の力は、「姿勢」によって生み出される。その姿勢を自在に応用して武を舞う。
 胸郭や骨盤の和らぎとか、身体各所の使い方とか、口伝(秘密を守るため文書化せず口伝えのみで授ける奥義)だの秘伝だの、いろんな極意をいっぱい習って山ほど身につけたとしても、いざという時にどれを使ったらいいかわからず遅れを取る、というのでは長年努力を積み重ねてきた甲斐がないというものだ。
 龍宮道のすべてのわざ・修法は、ことごとく<姿勢>へと還元されるようになっている。言葉を換えれば、練りに練ったその<姿勢>さえ整えれば、これまで修得したすべてのわざが機に応じ変に応じて、自ずから・自然に発動するようになるのだ。
 そして、腰腹同量の姿勢の涵養かんよう(水が染み込むように少しずつ育てること)は、孟子のいわゆる浩然の気を養うことへと直結する。それは科学と宗教のすいを、我が心身の中心(腰腹部)において結び合わせようとする営みにほかならない。

動画36 『自由組手3』 撮影:2023.05.04 於:天行院

フルハイビジョン画質 04分14秒

※浩然の気とは、天地に充ち満ちるはかりしれないほど大きな働きであり、大宇宙に直通する大らかで豊かな気持ち・公明正大で不屈の心ばえを指す。

<第十二回へ続く>