2023.12.02
杖対木刀のシチュエーションにて、術者が支撑底面の中心に重心を落とすとどんなことが起こるか、いろいろ試してみた。私にとっても初めての試みであり、ただ重心を床に対して垂直に落とすだけで何ごとか変化が生ずるものなのか、誰しも疑問に思うところだろう。が、実際にやってみると確かに、彼我の関係性が瞬時に一変するのである。
とはいえ、どこをどう動かして何をした、といった実感はまったくない。私がずっと一貫して説いてきたのは、Doing(何かをすること)ではなくBeing(在り方)についてであり、ここで言うBeingとは「姿勢」にほかならない。
フルハイビジョン画質 06分01秒
2023.12.04
今回取り上げる3つの動画は、1セッションを3つに分けたものだが、術者が木刀を取ろうが杖を手にしようが、そしていかなる状況に置かれようとも、重心が支撑底面の中心に落ち、全身の姿勢が整った瞬間、まったく意図することなく、努力の感さえなしに、あっけないほどシンプルにわざが極まってしまう。「全身の姿勢」には、手にした武器も含まれるし、のみならず相手と自分とのゲシュタルト(一つのまとまった、有機的全体性)をも指す。相手のことを抜きにして、ただ自分だけが独立した個として重心を操作しても、何も起こりはしない。
特に速く動いているわけではなく、そもそも武術における「速さ」とは相手との相対性においてのみ意味があるわけで、ゆったり柔らかく動いているように傍からは見えようとも、「間に合」いさえすれば、それでよいのである。
フルハイビジョン画質 08分17秒
2023.12.06
体験者の感想をご紹介しておこう。
●ほとんどこちらが打ち込んだ状態からでも、一瞬後には、まるで時空を操作されたかのように、先生に入り込まれ、こちらが絶対的に不利な状況に変化するのは不思議という他ありませんでした。
注意して観ていると、先生の周りの空間が歪んで突然先生が絶対有利な位置に立っていらっしゃるように感じたのですが、同じわざをゆっくり行なってくださると、自分の内面にも流れが起こっており、先生が動かれると同時に私も知らぬ間に動いてしまっていたことに気づきました。自分から斬られに行っているようでもあり、組手において先生を突いていった際の、まるで自分から先生のいないところを突いてしまっているような不思議な感覚が思い出されました。(東前公幸)
フルハイビジョン画質 08分24秒
<第二十回へ続く>