Healing Discourse

龍宮道メモ 第二十回 支撑底面

2023.12.08

 すでに述べた通り、第10回龍宮会のメインテーマは「支撑底面の中心に重心を垂直に落とす」ということだった。
 支撑底面の中心に重心を落とす時、足に着目すると、「体の重さが足芯(土踏まず)に落ちて、爪先側へも踵側へも偏らない」状態となっている。
 どうやって支撑底面の中心に重心を落とせばよいのか、動画の中で具体的に説明しているが、奥義に属する秘伝情報の一つであり、注意深く観て、聴いて、感じて、自らのものにしていただきたい。
 これが身につくと、支撑底面中央に垂直に重心が落ちた状態を保ちつつ、ただそれを運ぶように足を動かせば自ずからわざとなる境地が現われる。私が大東流合気柔術を学んだ恩師・岡本正剛先生は、「歩けば武となる境地を至高とする」とおっしゃっていた。本部御殿手宗家の上原清吉先生も、歩きの重要性を特に強調されていた(御殿手には歩法の特別な訓練法がある)。聴くところによれば、合気道開祖・植芝盛平翁も同様のことを述べていたそうだ。

動画62 『支撑底面1』 撮影:2023.06.10 於:天行院

フルハイビジョン画質 05分40秒

2023.12.10

 動画冒頭で示されているのは、支撑底面とその中心の感覚をより一層判然とさせるため、首-腰と咽喉-腹が密接に対応し合っていることを応用して、咽喉・首を整えることで、腰・腹を覚醒させる修法だ(本シリーズで以前言及したことがある玄武修法の一法)。
 咽喉と首に両手でヒーリング・タッチし、掌の凝集→レット・オフで咽喉を上下に開くと、連動して首も上下に開く。ここまでがまず第一段階。
 次に、その体勢で「咽喉・首から上(頭)」と「咽喉・首から下(体)」を別ける。身体を頭、咽喉・首、体の3つのゾーンに別ける、ということだ。
 例えば、直立姿勢から前屈しようとする。その場合、よく「頭に中心がある」などと言われるが、具体的にどういう状態を意味しているのか、初心者~中級者にはなかなかわかりにくい。
 ところが、咽喉(と首)にヒーリング・タッチしておき、そこから上(頭)と下(体)という風に意識のゾーン(領域)を別ける視点を持ち込めば、感じ方がまるで変わる。
 従来のやり方で前屈しようとすると、咽喉や首、そして上側の頭に力が入り、咽喉・首から下の胴体への意識はまったくお留守になっていることがよくわかるだろう。
 その、頭や咽喉・首へ偏っている意識を、タッチしているところ(咽喉・首)より「下」(=体)へと移すと、全体としての動きの質そのものが根本的に変わるのだが、これは先達にヒーリング・タッチで導いてもらえばすぐわかり・できるようになるものだが、独習では少々難しいかもしれない。

動画63 『支撑底面2』 撮影:2023.06.10 於:天行院

フルハイビジョン画質 07分15秒

 支撑底面の中央に垂直に落とすよう、受け手の重心を何度導いても、ぐらぐら全身が波打つばかりで重心が一向に安定しない場面が幾度も登場するが、術を受けている最中に一生懸命「考え、分析し、記憶しようとする(頭に重心が残っている)」とあんな風になりがちだ。わざを受ける際は、素直に、トータル(全面的)に。それが熟達の秘密だ。
 恩師・岡本正剛先生は、38歳で初めて武術(大東流合気柔術)の世界へ足を踏み入れ、修練と工夫を重ねてついには現代武道界における名人の一人と称されるまでに至った。その一事のみを取っても物凄い人なのだが、岡本先生が常々おっしゃっていたのは、「学ぶに際して何か特別なことをしたわけではないが、先生(堀川幸道)からわざをかけていただく時には、毎回全身全霊で受けることを常に心がけた」、と。

2023.12.17

 第10回龍宮会の動画は以上である。
 今後も、龍宮道(ヒーリング・マーシャルアーツ)と関わる動画を撮った際は、その都度本シリーズでご紹介してゆく。

動画64 『支撑底面3』 撮影:2023.06.10 於:天行院

フルハイビジョン画質 02分34秒

<第二十一回へ続く>