Healing Discourse

龍宮道メモ 第二十一回 踵の和らぎ(第一回相承会より)

2023.12.26

 2023.08.11~14、第一回相承会を執り行なった。その際、龍宮道関連の動画も少し撮影したので、簡潔な説明を添えつつ順次ご紹介してゆく。
 以下の動画は、全身調律のため皆で楽しく武の波紋を舞う場面。

動画65 『自由組手1』 撮影:2023.08.12 於:天行院

フルハイビジョン画質 04分04秒

2023.12.30

 従来の龍宮会と違い、相承会は龍宮道専門の学びの場ではない。今回、休憩時間などを利用して龍宮道の動画をいくつか撮ったのだが、その内容は初心者にとっては「いきなり」とか「難解」の感が否めないかもしれない。 
 このあたりからは、初心者向けというよりは中級者向けのわざが主流となってゆくようだ。それらを初学者が観て・一緒に稽古することはもちろん構わないが、「先になるとこんなこともやるのか」程度の軽い気持ちで取り組めばよかろう。「取り稽古(上級者のわざを心静かに観ることを通じて学ぶ)」というのは、思いの他大きな実入りのある稽古法だ。
 以下の動画66と67で取り上げているのは「踵の和らぎ」というテーマだが、すでにご紹介した「脚下照顧(支撑しとう底面の中央と重心を結んだ線が床に対し垂直となる)」を実現すると、踵が和らいで床にピタリ密着する(が、居着かない)状態が顕われてくる。この時、踵が虚になって力が内向するが、それはふくらはぎやももの後ろ、下腹にまで波として及んでくるような作用だ。
 動画の中で示されている、「踵を外側へ揺さぶることと、踵の内面を波打たせ内向させること」の比較にもご注意いただきたい。
 こうした虚の波を使って相手との間合いを詰めれば、踵が実(力が入っている)で同様の動作を行なった時と比べ、受け手側は圧迫感をまったく覚えず、むしろ相手に吸い込まれるような不思議な感覚が生じる。ふわりと、両者の間の空間(間合い)が突然縮小するような、そんな奇妙な感覚だ。

動画66 『踵の和らぎ1』 撮影:2023.08.12 於:天行院

フルハイビジョン画質 05分49秒

2024.01.05

 以前どこかに記したことだが、寝ている受け手の踵を手でギュッと圧縮すれば、相手は頭の血圧が一気に高まるような、生理的に嫌な感じを覚えるものだ。そこから踵の圧縮を柔らかに解放してゆく・・と、受け手の頭の中がスーッと爽やかに晴れ渡る。何度か繰り返せば、踵が塊のように固くなることで脳への血圧が高進するらしい、と体でわかるようになる。
 踵を虚で使うことを体得して初めて、荘子が言う「真人は踵で息す」という言葉の真髄が「体丸ごとで・わかり、できる(他者の心身にも同じ作用を映せる)」ようになるのだ。
 踵の虚がわかると、踵は爪先(特に拇指)と対応して内的に伸縮しながら、と同時に、踵とシンクロして下腹内部で球状の緊張感覚が発生する(腰腹同量の力)。
 全身丸ごとで動いてみれば、あるいは動いてみようとすれば、(多くの者がついやってしまいがちな)踵から力を外へ押し出す、あるいは蹴り出すような動きとは、全身の枢要部たる腰腹・尻腰しっこしよりも先に、踵やその周辺部が動作し始める反自然的状態にほかならない・・とすぐわかるだろう。ヒーリング・アーツで言う「本末転倒」というやつだ。
 これとは逆に、ごく普通にノーマルに、腰腹・尻腰が先行して全身がそれに従う時、踵へは「踏み外す(外へ力を出そうとする)」ような力ではなく、踵の内部から脚の裏を通って下腹へと吸い込まれる(立位では吸い上げられる)ような、そんな普段とはちょっと(あるいはかなり)異なる力(作用)が働く。
 そうした、本来は自然なはずの心身のバランス関係を、ヒーリング・アーツではトリニティ(三位一体)と呼んでいる。身体各部の全身的な関係性がトータルでバランスの取れた活性状態においては、踵の伸縮は即、腰腹間の球状緊張の伸縮となる。そしてその伸縮は、呼吸と完全に合致している(踵で息す、の状態)。
 呼吸を応用して、球状緊張の圧縮を爆発的に起こす。それが気合であり、発勁だ。「内破」がダイナミックに表現された、一つの極致だ。

動画67 『踵の和らぎ2』 撮影:2023.08.12 於:天行院

フルハイビジョン画質 05分31秒

<第二十二回へ続く>