Healing Discourse

其之十七 ヒーリング・ストレッチ。本末転倒を転倒せよ

文:高木一行

 今回ご紹介する動画(3編)は、「上品ぶったよそ行きの態度でなく、普段自分たちが修練に臨む際のありのままの姿で、試しに撮ってみよう」と、あらかじめ打ち合わせて撮影したものだ。
 ヒーリングの気持ちよさが炸裂して叫び声が出ようが、自発・自律運動が発出して思いがけない動きを身体が勝手に演じようが、「流心」(流れ続け、留まらない心)を常に心がけ、互いへの敬いと周囲への配慮を忘れず、場の流れに任せて徹底的に楽しむ。・・そういう趣向だ。
 結果として、エッジ・オブ・カオス(カオスの縁)・・・どころかカオスそのものの光景が映し出されることとなったが(特に動画1)、防音にも配慮された安全な環境にて、礼儀とか社会的ルールなどの文明の羈絆きはん(束縛)・桎梏しっこく(手かせ足かせ)から自分自身を積極的に解き放つことは、人間の裡に眠っている野生の活力を目覚めさせる上で大いに効果がある。
 何よりそれは、途方もなく楽しい。人生そのものを賦活ふかつする(活気を与える)素晴らしい力がある。
 即ち、ディープで強力な<ヒーリング>を求め、私たちは動画のようなことに「意識的に・注意深く」取り組んでいるのであり、そしてもちろん、いつもいつも同じようにカオスを演じているわけではない。
 我々は常に敬虔な祈りを忘れず、地球規模の祈りに基づきあらゆることを行なっている。
 激しい稽古が一段落した折りなどに、時として拍手が、自ずから沸き起こることもある。驚きと楽しさと神秘に満ちた、この類い稀なる<道>を賛仰さんぎょうし、真剣な探求者としてお互いを讃え合う、そんな拍手だ。 

 何だか言い訳めいたことを最初にくどくどと述べてしまったが、動画の中で説かれている内容は、多くの人にとり非常に重要な意味を持っていると思う。原理や具体的な手法は動画中で解説されているから、注意深く観て、慎重に試してみてほしい。
 難しいことは何もない。ヒーリング・タッチなどの基礎がない人でも充分な効果を挙げられる。
 正しく行ないさえすれば、これまで体験したことがないような新しい種類のストレッチ感覚と気持ちよさが味わえるようになるだろう。動画内で楽しげにヒーリング・ストレッチを修しているのは、いずれもこの日初めて、本修法を伝授された人ばかりだ。
 本末転倒を転倒する、とは、「もと」と「末」が転倒した状態を逆転させ、本来の自然な状態へ回帰する、という意味だ。万事を中心で受け、中心でなすことができる身体を練り上げるための、重要なステップといえよう。

動画1 『ヒーリング・ストレッチ 骨盤部』
2023.01.08 於:天行院

フルハイビジョン画質 08分03秒

動画1 『ヒーリング・ストレッチ 肩』
2023.01.08 於:天行院

フルハイビジョン画質 02分34秒

動画1 『ヒーリング・ストレッチ 肩・応用』
2023.01.08 於:天行院

フルハイビジョン画質 02分44秒

 ヒーリング・ストレッチという、ヒーリング・アーツの新たな修法体系が、今新たに示現(神仏などの超越的実在が霊験を示すこと)し始めたことを感じている。
 身体全体のバランスは、もとに重きを置けば整い、末に偏すれば崩れる。ごく当たり前のことだ。が、その当たり前のことが、一般のストレッチにおいてはなぜか活かされてないようだ。
 動画で示されていたように、普通のストレッチとヒーリング・ストレッチとでは、働きかけるべき勘所かんどころも、働きかける向きも、まるで違う。
 私たちの言う「ヒーリング」が、全体性(トータルさ)や調和を指すということについては、これまで何度も述べてきた。ヒーリング・ストレッチとは、「ストレッチという行為にバランスを与え調和させる」道だ。

 最後に、動画に登場する人たちの感想をいくつかご紹介しておく。

◎仰臥し両膝を両手で抱えた状態にて動いてみると、足や膝、腕などにまず意識が行き、そこが先導して動こうとしていることが体感されてきました。それらに気づいたら、その都度レット・オフしていきました。
 先生に尻など骨盤部を柔らかくおさえていただくと、仙腸関節あたりが溶けて、そこから波紋が発生するような独特の感覚が起こってきました。
 気持ち良くはあるのですが、馴染みのない感覚に思わず身体の他の箇所を固めてしまい、動きが止まることがありました。しかし、ゆっくりと骨盤部から起こる波を受け入れるようにレット・オフで力を抜いていきますと、今までにない感覚で身体の特に腰脚部に流れが生じて動いていきました。他の方がヒーリングが極まって発せられる声とも共鳴し、体の芯から力が湧いてきて、気がつくと楽しく転げ回っていました。
 肩のストレッチを行ない、自分なりに精一杯伸び切ったと感じられる状態より、先生が肩胛骨のあたりにヒーリング・タッチされました。・・・すると背中全体が地滑りを起こしたように動き出し、全身に心地良いストレッチ感覚が広がり満ちていきました。一回行なった後は、全身丸ごとリフレッシュされたような壮快な感覚であり、動いてみると腕と肩胛骨や背中の筋肉のつながりを感じながら滑らかに動かすことができました。(東前公幸)

◎仰向けに寝転び、両脚を両腕で膝裏から持ち抱えるような体勢を取りました。先生から、そのまま左右にゆっくりと転がりながら、普段、自分がどこからどのように動かしているのかを感じ取るよう指示がありました。すると、頭から先に動いたり、足先から動いたり、身体の末端部分で引っ張るように転がっていることが分かりました。
 次に先生から、そういったことを全てやめて、この場合の「もと」となる尻だけを動かしてみるよう言われました。尻だけを意識しながら、そこをくるくる動かすようにしてみると、今まで感じたことのない原動力により身体が左右に転がり始めました。
 そのようなことを今までしたことも体験したこともなかったので大変驚きましたが、同時に尻周りの奥深いところにまで動きが及ぶことで、様々な筋が揉みほぐされることが明確に分かり、それはこれまで感じたことのない、まるで病がいやされていくような感覚でした。そして、深い感謝による喜びの声が溢れ出てきました。 
 さらに、別のストレッチの型を行ないながら、先生から臀部周辺と触れ合っていただきますと、太腿周辺の筋がピンと引き伸ばされて張りつめていた感覚が溶け、それよりも深い、骨盤の奥が柔らかくストレッチされることを感じました。凝りや強張り、滞りがスッと解けていく今まで感じたことがないプロセスを味わいながら、驚きと気持ち良さによる喜びの声を上げ続けていました。(渡邊義文)

◎一般的な肩の柔軟法で自分なりに最大限ストレッチした状態から、高木先生が私の肩胛骨あたりに柔らかくタッチされると、肩から外へ向かって伸ばすようにかかっていた力が反転し、肩そのものの中に伸ばし・ほどき・緩める力が集約されていくのが感じられました。ストレッチが終わると肩が驚くほど軽く、肩だけでなく全身に流体的な柔らかさが満ち満ちていくのが分かりました。
 中国の武術や気功の世界でストレッチ的な修練をあらわす言葉に「易筋」というものがありますが、まさに「易 = 変わる・変化する」、それも硬いものが柔らかくなるというレベルではなく、固体が液体に、あるいは気体にすらなるかのような劇的なレベルで変わる驚きがありました。(道上健太郎)

<2023.01.29 水沢腹堅(さわみずこおりつめる)>

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