Healing Travelogue

奇跡の清流 〜銚子川巡礼:2023〜 第二回 銚子川の生き物たち

 銚子川には生活排水が流れ込まないので、川の水を飲むことができる。味わいも口当たりもマイルドで、体にすっと染み込むような優しい水だ。
 川で泳げるとか、川の水を飲めるとか、現在のわが国では極めて異例なことと言えるが、かつて(高度経済成長が始まった昭和30年頃より前)日本中どこの川でも心慰められる美しい光景を楽しめたのだ。カワウソも全国の川に棲んでいた(1979年を最後に目撃例がなくなり、2012年に絶滅種に指定)。
 豊かな自然が破壊され失われるに従い、人の心も体もむしばまれていって、社会は荒れすたれてゆく。そうしたプロセスを私はじっとみまもって来たが、わずか数十年のうちにかくも甚大な――人類史上かつてなかったほどの――変化が、世界にも、人の心身にも、起きようとは、・・・一体誰が予想し得たろうか!?

 閑話休題。銚子川へ戻り、今回の巡礼で出会った川の生き物たちをご紹介しよう。

オオヨシノボリ

オオヨシノボリ(Rhinogobius fluviatilis)。北海道を除く日本各地に広く分布するハゼの仲間。流れの速いところに多く、雑食性で、岩に付着した藻類や小型の水生昆虫などを食べる。クリックすると拡大(以下同様)。

ボウズハゼ

ボウズハゼ(Sicyopterus japonicus)。吸盤のような口で岩に吸いつき、藻類をもぐもぐ食べている。強い吸着力で、小さめの瀧やダムをのぼることもできるそうだ。

ヒラテテナガエビ

昼間はほとんど岩陰に隠れて過ごすシャイなヒラテテナガエビ(Macrobrachium japonicum)。

ヌマチチブ

ヌマチチブ(Tridentiger brevispinis)。小型のハゼの仲間。青みを帯びた大きな白色の斑紋が特徴。

カワムツ

カワムツ(Nipponocypris temminckii)。西日本と東アジアに分布するコイ科の魚。動きが敏捷で撮影しにくい。目としっぽを結ぶ太く黒いラインを目印に探せば、小さくて細長い本種が何頭かグループになって動画のあちこちに登場するのを発見できるだろう。

オイカワ

オイカワ(Opsariichthys platypus)。浅瀬にいる。こんな色だと目立って敵に見つかりやすいのではないかと余計な心配をしてしまうが、水面のそこかしこが虹色に輝くような環境では、逆に保護色になっているのかもしれない。写真左下の地味な色をしたのが雌、虹色の派手な色彩が雄。

<2023.09.01 天地始粛(てんちはじめてさむし)>