Healing Discourse

生命の旋舞 〜モルディヴ巡礼:2022〜 第九章 エピローグ

 明日はモルディヴを去るという日、いつものリーフエッジで帰神撮影していたら、シルエットにみおぼえのあるこぶりのウミガメが現われた。いつもバルコニーのそばまで来て海へ私をいざなっていたのは、きっとこのカメに違いない。
 そっと観察していると、カメが口に何かをくわえているのに気づいた。少し経つと息継ぎのため海面へ浮上してきて、そのまま潜らずじっと静かに浮かんでいるから、そろりそろりと近づいていったところ、カメが口にくわえていたものを放して・・・、それが差し出した私の掌の上に落ちてきた!
 海綿(ウミガメの食べ物)の切れ端だったが、「龍宮土産だ」とつかのま喜んだものの、その後のカメの態度などを観ると、「これがなくなると、ぼくたち生きてゆけなくなるんですがね・・」と訴えかけているみたいに感じられてきた。実際、「そういうこと」だったのだろうと、今では確信している。

マンタ

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 最終章では巡礼のエピローグとして、フォニマグッドゥー島の光景や、そこに暮らす生き物などを帰神スライドショーでお楽しみいただきたい。
 モルディヴ巡礼の最終日は、久しぶりに空が一日中晴れ渡り、リゾートらしい帰神フォトも撮ることができた。
 木々などが天高く屹立する様を「亭々ていてい」と表現するが、モルディヴのココヤシにはまさにこの言葉がぴったりあてはまる。

ココヤシ

 オオコウモリが何度も登場するのは、フォトジェニックなので何度も繰り返し帰神撮影したからだし、オオコウモリという生き物を私が愛しているからでもある(昔、飼っていたことがある)。
 オオコウモリは賢くてよくなれ、フライト(飛行)させて一緒に遊ぶこともできる。怪我をした野生のオオコウモリを助けたところ、よくなついて、回復後もそのまま人間の元に留まり続けたという話は、熱帯を旅するとあちこちでよく耳にするが、その実例を私もパラオで実際に観たことがある。そのオオコウモリは、放し飼いでどこでも好きなところへ行けるのに、名前を呼ぶとすぐ飛んできて人間の腕(または胸)にぶら下がって甘え、夜はいつも自分用の寝室ケージで眠るのだ(出入り口は開放)。
 フォニマグッドゥー滞在中、雨が降り止むたびに私がカメラを抱え、上方をみあげながらリゾート内を徘徊するものだから、最初はオオコウモリの存在にすら気づかなかった他のツーリストたちも、しょっちゅう上を見上げてオオコウモリを観察する姿が頻繁にみられるようになった(呵々大笑)。

オオコウモリ

 シロハラクイナ(Amaurornis phoenicurus)の鳴き声をリゾート内でよく聴いたが、警戒心が非常に強く、時折茂みの中へ駆け込む姿をちらとみかける程度だった・・のに、最終日にはご覧の通り、黒い雛鳥ひなどりまで伴い、間近でじっくり帰神撮影することを許してくれた。
 昨年、西表島巡礼の折りに聴いた話だが、20~30年くらい前まで「飛べない(ほとんど飛ばない)」鳥として知られていたシロハラクイナが、最近は飛ぶようになった、と。どうやら、飛ばずに自動車事故で死亡する個体が自然淘汰され、よく飛ぶ個体だけが選別されたらしい。

シロハラクイナ

 砂地の浅瀬に現われたマダラトビエイの子供。ペンギンみたいな顔が可愛い。この個体は、カスミアジにずっとつきまとわれ、ひどく迷惑そうだったが、あまりのしつこさに堪忍袋の緒が切れたのか、ヒレを大きくはばたかせ、カスミアジを置き去りにしていずこかへと泳ぎ去ってしまった。

マダラトビエイ

 帰りの水上飛行機から観たリゾートの一角。弧を描いて一列に並ぶ水上コテージの真ん中あたりに、私が宿泊していた部屋がある。動画(『海の女神の裳裾』)でご紹介した砂州があるところ、と言えば、おわかりだろう。

リゾート

<2022.11.23 虹蔵不見(にじかくれてみえず)>