Healing Discourse

ヒーリング・リフレクション1 第二十回 死の恐怖の超越

文:高木一行

◎前々からずっと不満を感じてきたことがある。
 武術各流派にはそれぞれ優れた特色があり、私など足下にも及ばないような厳しい修業を積み、技の堂奥に達された師範諸氏も決して少なくない。というのに、(戦いにおいて)「いかにして勝つか」、「いかにして相手を制するか」、「いかにして生き残るか」のみが現今の武術界ではもっぱら説かれ、「いかにして死ぬか」、「いかにして死の恐怖を超えるか」、「いかにして勝つことへの執着を脱するか」、といった武術の根本的テーマについて語られることがほとんどない。
 非常に残念だ。

◎死の恐怖を超えること。それも観念論や思い込みではなく、身体の具体性に基づき、死を恐れることそれ自体を、神経的に反転させる。
 死への恐怖が神経レベルで反転すると、面白いことに、勇気が腹底ふくていより湧き溢れてくる。
 ぎっくり腰の激痛を反転させるとエクスタシーが生じ、視野の一部のみへの集中を反転させると視界全体に意識が均等に行き渡って立体視(観の目)となる、それらと同類の現象といえる。
 死の恐怖を内破レット・オフするためには・・・・、まずそれを全面的に受け容れることだ。

第三回のカオニャオ・マムアンを創ってみたところ、ココナッツ・ソースがたくさん余ってしまったのだが・・・、という相談が来た。
 そんな時、タピオカ(小粒のもの)を常備しておくと、マレーシアのスイーツ、サゴ・グラメラカへと流用できる。
 ぐらぐら煮立った湯にタピオカを投入し、時折かき混ぜながら20~30分弱火で煮る。白い芯がなくなったらザルにあけ、さっと軽く水で洗って(洗いすぎると粒がバラバラになるので注意)、器に移し冷蔵庫で冷やす。
 プリンくらいの硬さになったら、ココナッツ・ソースをたっぷりかけて賞味する。日本で売り出したら流行りそうだ。
 以前、シンガポールからジャカルタへ飛ぶ飛行機の機内食でこれが出され、たちまち好きになって、その後方々を探し回ったのだが、スーパーなどで売っているものではなく、一般的なシンガポール料理、マレー料理、インドネシア料理の店でもメニューに載っておらず、当時は正式な名前もわからず、こうなったらもう自分で創るしかないと失敗覚悟で挑戦してみたら、まったく同じものが簡単に出来てしまった。ココナッツミルクとヤシ砂糖の風味がポイントで、グラメラカとはマレー語でヤシ砂糖の意味だ。
 随分後になって、マレー料理の中でもちょっと特殊な、ニョニャ料理のデザートであると知った。

サゴ・グラメラカ

帰神撮影:高木一行

◎龍宮館のペット蛇、コーンスネークのブラッドムーン。北米産。
 わが国のアオダイショウの仲間で、かつてはアカダイショウの和名で呼ばれていた。アメリカでCB化(Captive Breed:飼育下での繁殖)が進み、今では驚くほど多様な品種が作出されている。ブラッドムーンはアボッツ・オケッティという品種。
 温和な性質で、初心者でも楽に育てられ、サイズも手ごろで、日本でも人気のペットスネークとなっている。
 スライドショーをご覧いただくとわかるが、目が楽しげである。

ブラッドムーン

帰神撮影:高木一行

木のうろに入ったブラッドムーンとマヤ

帰神撮影:高木一行

◎今度はインド産のマンゴー(ケサール種)が、龍宮館にいっぱい届けられた。聴くところによると、マンゴーの原産地はインドらしい。
 インド産マンゴーのスパイシーでディープな香りは独特で、「5分批判されると1時間弁解する」と言われるインド人の押しの強さを、なぜか思い起こさせる。

インド産マンゴー(ケサール種)

帰神撮影:高木一行

<2021.06.17 梅子黄(うめのみきばむ)>