◎濃霧がしばしば立ちこめるジャワ島中部の高原地帯。
ジャワティーの茶畑が延々連なる霧深き高原にひっそりと建つジャワ・ヒンドゥーの聖地、チャンディ・ムンドゥッとチャンディ・スクゥへと、時間と空間を超え超越的に、皆さんをご案内しよう。チャンディはインドネシア語で「寺院」の意味だ。
本連載第十三回でご紹介したチャンディ・ボロブドゥールが、ワイサックなどの特別な仏教祭礼の折りを除き単なる過去の遺物/観光地と化しているのとは対照的に、ムンドゥッ寺院とスクゥ寺院は、いまだに参拝者が絶えない「活きた」聖地であることが、寺院のそこかしに捧げられた真新しい花々を観ただけでもよくおわかりになると思う。
男根や女陰をかたどった石像があちこちに布置されている。一説によれば、かつてこれら2つの寺院において、毎年新たに成人の年齢に達した男女が性愛の秘儀を先達より授けられるイニシエーション儀礼が執り行なわれていたというが、真偽のほどは定かでない。
スクゥ寺院と古代マヤ遺跡との奇妙な相似性がしばしば取り沙汰されてもきたが、まあ確かに、どこか似ているとは思う。
◎近所のスーパーで買ってきたアケビ。漢字では木通と書く。
甘い。高級な砂糖でもまぶしたような上品な甘さ。こんなに甘いアケビを初めて口にした。熊本産とのこと。
◎ニューヨーク生まれ、津軽育ちのスチューベン。ピオーネや巨峰のような黒色の粒だが、光にかざすとご覧の通り、赤紫色が浮き上がってくる。味は・・・ショ糖由来という独特のとろけるような甘さだ(糖度23度とか)。
◎今年は諦めかけていた幻の黒イチジク、ビオレ・ソリエスが、例年よりかなり遅れて龍宮館に届けられた。
栽培がかなり難しく、生産者は全国でも数えるほどしかいないそうだ。
甘さも香りも抜群。引き締まった食感も気に入っている。
◎オコゼの薄造り。
夏のフグとも呼ばれ、瀬戸内産は特に美味。ポン酢でいただく。なお、前文のようなケースで「いただく」という言葉を使うのは、現在の日本語では正しい用法といえないことは承知しており、つい最近その存在を知り私淑(※)している雁屋哲先生(1941~ 作家、漫画原作者、思想家)がご覧になったらお叱りを受けそうではある・・のだが、「食材の命をありがたくいただく」「命に対して謙虚になる」という意味を込め、そして言葉というのはそれ自体が命を持っていて常に生成変化し続けてゆくものであることに鑑み、本ウェブサイト内では敢えて「いただく」の新しい使い方を提唱している。
※私淑とは、直接会ったことはないが著作物などを通じて敬慕し学ぶこと。
◎少し前まで、豚カツの研究に専念していた。
一度も冷凍してない鹿児島産・純粋黒豚の分厚い特上ロース肉をまず手に入れ、丁寧に筋切りしてから塩を振り→小麦粉をまぶし→卵液にくぐらせ→生パン粉(細かいものが吉)をつけ→まず110℃の低温で8分、次に160℃で2分揚げ→バットで5分休ませてからカットし皿に盛った。揚げ油はもちろんラードを使う。
豚カツソースは、有名メーカーの商品数種(ノーマル味やゴマ味)、名古屋の味噌カツソースなどいろいろ取りそろえ、さあ、いよいよ試食だ!・・・と突撃したところ、豚の脂が私にはきつ過ぎて、半分も食べられなかった(呵々大笑)。
<2023.11.09 山茶始開(つばきはじめてひらく)>