川が海と出会う河口部で、淡水と海水はどんな風に混じり合うのだろう? 理論的には両者の比重がかなり異なるため、広範囲にわたって層を成すはずだが、銚子川ではその様子を実際に自分の目で観察できるという。清流として有名な四万十川や仁淀川ですら、河口部はさすがに濁って中の様子がみえなくなるというのに、銚子川が「奇跡の清流」と呼ばれる所以だ。
塩分濃度の異なる水が接する境界面では、視界がゆらゆら陽炎のように揺らぐハロクライン現象が起こる、とされている。
実際に銚子川の河口部(電車が通る鉄橋のあたり)でシュノーケリングしてみたが、最初は水の冷たさに気を取られてよくわからなかった。ところが、何気なく手を水底へ伸ばしてみたら、そのあたりの水が異様なほど温かい。上層が川の水、下層が海水と分かれているのだ。
改めて視界を周辺へ広げると、なるほど、中層あたりが陽炎みたいにゆらゆら揺れ動き、ものみながぼやけてみえる。
以下の動画を注意深くご覧いただきたい。
フルハイビジョン画質 02分25秒
2種類の水が出合う際の変化をもっとわかりやすく示せないものか、同行者に頼み岸辺に添って泳いでもらった。水が攪拌されて生じた濁りは、海底の泥や砂を巻き上げたものではない。
さらにわかりやすいみせ方は・・・とあれこれ考えてみても致し方ないから、余計な作為や思い煩いをヒーリング・アーツの原理ですべて投げ捨て(内破)、空っぽの器となって自然界の神々へ祈りを捧げた・・・その瞬間、どこからともなく鮎の大群が現われ、「お手伝いいたしましょう」とばかりに、私の目の前で海底の小石をいっせいにつつき始めた。
すると、鮎たちの周囲が光学迷彩みたいにおぼろにかすみ、個々の魚体を明確にとらえることができなくなるではないか!
鮎たちは何度も繰り返し、この奇跡のような光景を演じてくれた。「ちゃんと撮れましたか」とでも言わんばかりに。
こんな場面と出会えるとはまったく期待してなかったので、同行者たちも大喜びだ。「なるほど奇跡の川だ」、と皆で納得し合った。
フルハイビジョン画質 01分16秒
川で孵化した鮎の子は、海へと下ってそこで成長し、その後再び川を遡って産卵する。口で言うのは簡単だが、魚にとって水(環境)の温度差は人間が感じる数倍以上に匹敵すると言われているし、これまで海で暮らしていたものをいきなり淡水に放り込めば、たちまち死んでしまう(逆も同じ)。
鮎たちは汽水域のハロクライン現象が発生するあたりで、上層へ行ったり下層へ戻ったり、あるいは周辺の水をかき回したり、あれこれやりながら徐々に体を異なる環境へと慣らしてゆくのだろう。
上流~中流にたくさんいたボウズハゼ(下写真)も、鮎と同様、川と海を行き来して命をつなぐライフサイクルを送るという。
<『奇跡の清流 〜銚子川巡礼:2023〜』 完>
<2023.09.20 玄鳥去(つばめさる)>