◎滝行中、滝の上に跳び上がった行者がいたという話を、以前聴いたことがある(気づいたら滝の上に立っていたらしい)。真偽は知らない。
ところが、それと良く似た現象を、前回ご紹介したヴィクトル・シャウベルガーが目撃しているのだ。
ある早春の月が明るい産卵期の晩、森林監視員として密猟者を滝のそばで見張っていたシャウベルガーは、滝つぼの底からあらわれた大きなマスの奇妙な行動に注意を引きつけられた。
彼は次のように記している(『自然は脈動する』より)。
「大きなマスは突如、溶けた金属のような光沢をもって落ちる巨大な滝の水流の中に消えた。円錐状になった水の流れの中で、一瞬、魚が激しく回転するように舞っているのが見えたが、そのときは、いったいどういうことなのかわからなかった。マスが回転をやめると、みじろぎもせずに上に浮き上がっていくように見えた。滝の下の上り口のところまで来るとマスは体を翻し、自分を強く押し上げて行くような動きで、滝の上部の向こうまでさかのぼって行った。そして、速い流水の中で力強く尾を動かすと、姿を消した。」
◎シャウベルガーは上記のような出来事を、その後何度も目撃した。彼によれば、そうした現象が起こる際、うまく光が差していれば、滝の水流の中に中空のチューブ状の「浮揚性の流れ」の通路をみることができるという。
排水穴に水がごぼごぼ音を立てながら流れ込む際にできる渦巻きを、逆(上)向きにしたようなものと考えるとわかりやすい。
シャウベルガーは、後に空気と水から直接エネルギーを作り出す発電機を開発した際、インスピレーションの源泉となったマスに敬意を表してトラウト(マス)・タービンと名づけたが、これが後に内破マシンと呼ばれるようになったものだった。
◎個人宅としては巨大といっていい1舞(枚)の絵が、天行院併設の妻の音楽アトリエ(スタジオ)にて、強烈に異彩を放っている。
私は、その絵の前に立つ時には、いつも自然に姿勢を正してしまう。
ペルーのヴィジョナリー・アーティストである故・パブロ・アマリンゴ氏(1938~2009)が特別に描いてくださった大作で、『Supai Unai Tucuna(精霊の神話的な変化)』と名づけられている。
アマリンゴ氏は、元シャーマンの画家・教育者という風変わりな肩書きの持ち主で、かつてシャーマン時代に観た幻覚植物の世界を写真のように克明に記憶しており、それらを素材として一連の極めて呪術的な絵画を描いた。アマゾンの精神世界と自然とが有機的に融合した、南米版生命マンダラとでもいうべき神秘的な作品群は、国際的にも評価が高い。
以前、アマリンゴ氏に、日本の某美術館に納められたある作品と同じモチーフで描いてもらえまいかと特別リクエストしたことがある。少したって作品が送られてきたが、構図から細かい模様に至るまでオリジナル(?)そっくりだったから妻共々、驚いたことがある。
写真のように精密な記憶力、というのはどうやら本当らしい。
◎以下は、パブロ・アマリンゴ氏による作品の説明だ。
Supai Unai Tucuna(精霊の神話的な変化)
アマゾンの神話によると、大蛇サッチャママ(密林の母)の由来は、植物を保護するからだという。身を動かし住処の大地を振るわせると、大雨を降らせ、体の上に生えている小さい木々を大きく育てると信じられている。この蛇は神話の中だけでなく、実際に密林に棲んでいる。地上で巨大な大蛇になると、今度は河に住処を移し、ヤクママ(水の母)になると言われている。絵の中では、アマゾン独特の密林が創り出した環境の神秘を象徴している。
「ゾウの耳」と呼ばれる植物は、絵の中では、精霊の活力として表わされている。ヴィジョンによれば、精霊の主は強力な緑のゾウだ。この植物は神経系の強化、血行促進などの薬効があり、心臓病予防として温浴に使う。
白い眉とひげをたくわえた黒い王は、アヤワスカ・ヴィジョンの教えによると、「公平」と「公正」のシンボル。正直、理性、正義、完全というものを隠喩している。この徳を持ち続けるのは容易じゃないから、黒い色で示される。白い眉とひげは、公正を生み出す注意を表わす。この徳があれば、世界は平和になる。王は人生を司る象徴でこの絵では人生の幸福は公正という徳によることを象徴している。
アルトマリカは樹木レナコに寄生して育つ植物で、葉はシャーマンがお祓いやシャカッパにするのに使われる。精神集中している時に、すべての作業がうまくゆくようにするものだ。この植物の精霊は、樹木レナコの下に住まう美しい王女で、滅多に出合うことはない。この植物は美と愛の象徴だ。
この絵では、各々の色は、まわりに幸福感をもたらす徳を表わしている。
黒:放射エネルギー
白:平和と純粋
赤:愛、公正、力
緑:生命、聖なる輝き、またはオーラ
オレンジ:叡知
黄色:知性
藍:知識と判断力
青:理解
紫:霊性
インスピレーションをもたらす偉大な賢者と一緒にいるのは、大気の女精2人、つまり風の女神ペルヌガルとラジルで、あらゆる精神集中に力を生み出すとともに、霊的世界の純粋を表わしている。
鳥のくちばしのような白い青色のマリリは、レモカスピ、アホスキロ等の樹木の医薬のマリリだ。またシャーマンが治療している時に密かに変化してシャーマンを守る。マリリは守っていることを象徴している。
ブンガの木は湿地で育ち、25から30メートルの高さになる。樹皮は厚く、香りのある樹脂を出す。この木は、その粘液がマリリのイカロ(魔術的な歌)には最も重要で、医術でよく使われる。
パパストゥルエノという植物は、簡単には手に入らない。私の祖父は、治療をする時にお守りのようにして、よく乾かしたこの球根を使っていた。アヤワスカで精神集中する時や、敵が呪いをかけたがっている時に使うようにと教えてくれた。アマゾンのシャーマンたちは、この植物の力を知っている。これでもって、雨や雷を呼び、種まきに潤いを持たせたり、災害から免れるようにする。
『精霊の神話的な変化』(一部) |
◎本日の1舞(枚)。
近所の八幡川土手にて。アマゾンのヴァイヴレーションとはまったく違う、穏やかでやさしげな「風土の質」。
<2012.04.04 清明>