Healing Discourse

ヒーリング随感4 第14回 続・龍宮拳伝授 2

◎先般プライベート道場にてヒーリング・ネットワーク同志のため設けた龍宮拳伝授会(2012年度第3回)の模様を、ムービーにて分かち合っていく。

 このムービーでは、もっぱら肩甲骨内側にある膏肓[こうこう]というツボを兵法系で活用する実例が示範されている。
 肩甲骨まわりのツボを兵法系より観た場合、医療系における「病、膏肓に入[い]る」に匹敵するような重要性を持つポイントが、肩甲骨の内側に左右1対、存在する。私たちはそれを膏肓と呼んでいるわけだが、例によって一般的な膏肓の位置(とされるもの)とは若干のズレがあるかもしれない。
 膏肓は、肩甲骨の動きの要であり、あるいはコントローラーとでもいうべきところだ(両肘を曲げ、胸を張って背中に力が集まるようにした時、えくぼのように凹む場所)。そして、その肩甲骨から、腕が「生えて」いる。 
 このムービーで示されているのは、静的な手合わせから膏肓投げ、膏肓打ちに至るまで、すべて膏肓に基づく術[わざ]だ。
 音楽は、妻のヒーリング楽曲『レインボーズ・エンド』。

◎続いて『カニのワルツ』で、カニ拳を舞う。
 これまでカニ拳のカニとはマングローヴガニ(ノコギリガザミ)のみを指すものと思い込んでいたのだが、脱皮したてのソフトシェル・クラブみたいに全身が柔化するプロセスを経て、別種のカニにも「シェイプ・シフト」できることが、今回わかった。
 ムービーの前半はマングローヴガニ、後半はシオマネキの舞が顕われている。それぞれ、術のかけ方がまったく違うし、その結果受け手に生じる波紋も全然違うから面白い。

◎『カニのワルツ』に関しては、妻の『ヒーリング・ダイアリー』第9回に関連記事がある。ディスコース『レインボーズ・エンド』第6回で奉納したスライドショー15『マングローヴ紀行』の、17番目の作品がマングローヴガニだ。
 ディスコース『ドラゴンズ・ボディ』第8回にも、私が以前西表島で撮影したマングローヴガニの写真がある(ノン帰神フォト)。
 友人たちはよく知っていることだが、私は熱烈なマングローヴガニ・ラヴァーだ。四半世紀以上前、沖縄の西表島で初めてマングローヴガニと出合って以来だが、あのマングローヴの豊かな生命力をそのまま濃縮したかのような芳醇な味といい、堅牢無比の鎧武者みたいな姿といい、まったくもって並外れたカニだ。巨大なハサミには、人間の指をブチ切るパワーが秘められていて、実際に指をやられた漁師もいる。
 深夜、銛を片手に泥沼のような西表島マングローヴ地帯を歩き回り、マングローヴガニを探したことが何度もある。あるいは、現地の友人が教えてくれた秘密のポイントに夕方サンマを入れた罠カゴを仕掛けておけば、翌朝には見事な大物マングローヴガニが入っているのであった。
 これを蒸して、あるいは塩ゆでにして、または焼いて、いただく際には、かに鋏[ばさみ]なんてお上品なものではまったく歯が立たぬ。木づちで殻を叩き割りながら、むしゃぶりつくのだ。
 そういえば、ずっと前のことだが、千葉県立博物館に素晴らしいマングローヴガニの化石が展示されていることを知り、あれこれ交渉の末にそれを借り受けてきてシリコーンで型取りし、樹脂を流し込んで超精密レプリカを作成したこともある(いくらマングローヴガニ好きとはいえ、いかにしてそんな非常識なことを現実化したのか、記憶をデリートしたため詳細は思い出せない)。
 こうしたマングローヴガニへの情熱が、南洋のカニ・ゴッドの嘉[よみ]するところとなったものか、ジョークに過ぎなかったカニ拳が・・・今や現実のものとなりつつある。
 これは一体、何を意味するのか? あるいは意味など、そもそもないのだろうか?
 私にはわからない。
 しかし、かなり面白い。

『カニのワルツ(マングローヴガニ)』 撮影:高木美佳 2011.07.12 パラオにて
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<2012.04.12 鴻雁北(こうがんかえる)>