Healing Discourse

ボニン・ブルー 小笠原巡礼:2013 第5部 奉納帰神海中ヌード

 着衣をすべて脱ぎ捨て、海中で全身を様々に波動させ、心身を浄化し、神々の意識を身に宿そうとする営みは、日本の神話である『古事記』『日本書紀』に淵源[えんげん]するものだ。

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 父島、境浦海岸。
 鳥のさえずりと潮騒だけが聴こえる白い無垢の砂浜。
 様々な色合いのボニン・ブルーに彩られた海。
 天高くそそり立つ南洋桐の巨木。
 小笠原特産のオガサワラタコノキの葉が風に翻弄され、乱れる。
 妻は一糸まとわぬ裸体となり、精霊の宿りとして我が心身すべてを神々へ捧げるべく、静かに渚[なぎさ]へと歩を進めていった。

 今回小笠原を初めて訪れたが、海水のあまりの冷たさに驚いた。さして深くない湾内でも、特に夕方頃になると長く泳ぎ続けておれないほど冷たくなる。
 聴けば小笠原では、2ヶ月遅れで気候の変化が海に反映されるのだという。海水が暖かくなるのは8月~9月くらい。が、その頃にはイルカたちが人間に飽きてしまい、ますますよそよそしくなるのだそうな。なかなか難しいものだ。

 この日の境浦ビーチは、連日の強風で底砂[そこずな]がまき上げられ、かなり透明度が悪かった。例によって、水中カメラのライヴビュー画面がほとんど見えない。それに、裸足の妻が尖った岩や、サンゴ、ウニなどを踏んづけでもしたら大変だ。
 そんな風にあれやこれやと気を使いながらの水中撮影は決して楽なものじゃない。が、努力が充分報われる美しい帰神フォトの数々が得られた。
 スライドショーが進むにつれ、次第次第に画面の透明感が増してゆき、禊[みそ]ぎ祓[はら]いを体感されると思う。
 水面の波紋の形をよく観[み]ると、いろんな海の生き物や、時に龍の姿などが顕[あら]われていることに気づかれるだろう。
 ある時は、妻の顔が龍神そのものへと変貌する。
「帰神」現象だ。

 本作は奉納帰神海中ヌードの前編にあたる。
 別の日、別の場所で帰神撮影し、数多[あまた]の龍神が次々顕現するという驚くべき現象を収めた後編は、第8部にて。

 それではスライドショーだ。