Healing Discourse

ヒーリング随感 [第7回] 熱鍼法

◎熱鍼刺激を与えると、どういう変化が皮膚に起こるのか? 私の実感によれば、1点が瞬間的に凝縮し、その反動でパッと開く。これを平田内蔵吉はプラスからマイナスへの電位変化と説明している。

◎熱鍼刺激の1点1点から、同心円状に波紋が拡がる。点々とリズミカルに柔らかに熱鍼刺激を連ねていくことで、神経的波紋の複雑な増幅干渉が皮膚面上で生じる。

◎こうした波紋にどれほどのヒーリング効果があるか、それを各自が端的に感じ取るための実験法を、私たちは種々考案しつつある。いろいろなやり方があるが、その一例は以下の通り。
 被術者はまず、手、腕を柔らかく動かしてみる。軽く振ったり、波打たせたり、普段自分がやっている通り、好きなように行なえば良い。そして、その際の運動感覚をよく感じ取っておく。
 次に、その腕に熱鍼法を受ける。前腕のみに、数列行なえば充分だろう。時間にして30秒〜1分程度。
 さて、そこで再び前とまったく同じ要領で手、腕を動かす。・・・と、皆たちまち目を丸くする。動きの軽やかさ、柔らかさ、細やかさが、まったく違っている。「まさかこれほどの効果とは思いませんでした!」という言葉を、これまで幾度(いくたび)聴いたことだろう。
 腕でも脚でも背中でも、同様の方法で熱鍼法の偉功を直ちに体感・確認できる。

◎こういうヒーリング作用を、内臓を含めた身体各部に及ぼすわけだから、効かないはずがない。事実、療術の専門知識も技術も持たない一般の人々が、わずか半日の講座で熱鍼法基礎レベルを修得し、家族知人等に施術して驚くべき(この言葉を何度も使うのはいい加減うんざりしてきているのだが、しかし私は本当に心底から驚いている)効果をあげつつある。熱鍼法の素晴らしさを私たちが力説するゆえんだ。

◎病人がどんどん元気になっていくくらいだから、健康な者が熱鍼法を行なえば、もっと健康に溌剌となり、繊細な感受性を育みながら、軽やかな心身を錬っていくことができる。
 かなり高度な感性を開いたプロフェッショナルたちにとっては、さらに超微細な感覚/意識世界への参入が可能となる上、プロのための上級心身ケア法としても活用できる。
 病人、初級〜上級者、そして超一流を志す人々すべてにとって福音となるヒーリングのアート、それが熱鍼法だ。

◎熱鍼法は粒子的な刺激を用いる。ゆえに、熱鍼法で身体の粒子感覚を高める(活性化させる)ことが可能だ。この事実も、ヒーリング・タッチによって簡単に検証できる。
 例えば、かしわ手を打って手の粒子感覚(しびれ)を活性化させ、労宮(掌の中心)に熱鍼刺激を数十秒間連続的に与える。すると、掌の粒子的振動感がみるみる高まっていくのがハッキリわかる。これをやる前と後とでは、タッチの感触がまったく違ってしまう。
 熱鍼法とは、感覚に火を灯し、振るわせる術(わざ)なのだ。

◎熱鍼法を習って、次のような感想を寄せてくれた人がいる(抜粋)。ヒーリング・アーツ体験者だ。
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 私は、この講座に参加するまで、熱鍼法とヒーリング・アーツとを区別して考えていました。しかし、それが思い違いであったことに気づくのに、そう時間はかかりませんでした。皮膚面に対し直角に触れ合うという要訣、そして、施術後の爽快感、解放感はまさにヒーリング・アーツそのものでした。逆に、要訣を守らず、乱暴に叩くように施術されると、いやしどころか、体が重く、硬くなってくるのを感じました。熱鍼器そのものにいやしの力が込められているのではなく、施術者が意識的に行なうか否かで、毒にも薬にもなりうるということを銘記しました。
 特に興味深かったのが、耳に対して熱鍼法を行なった時のことです。片耳に施術後、左右の耳の聞こえ方が全く違ってしまいました。突然耳元で、あたかもグレードアップしたスピーカーから極上の音楽が流れてくるような、大げさではなく、それくらいの質感の違いを感じました。その他、肘、肩などに念入りに行なったのですが、錘(おもり)が取れたように、非常に軽くなりました。
 講座の後は、全身が軽くなり、夜も心地よい眠気に包まれ、朝までゆっくりと眠ることができました。<S.M. 男性・宮崎県>

◎ちなみに熱鍼法という名称は、ヒーリング・ネットワーク独自の言葉だ。創始者の平田内蔵吉(ひらた くらきち)は「心療法」という呼び方を最もよく使ったようだが、現在では心療内科などまったく異なる意味で医学用語として使われており、今後この術(わざ)を新たに取り上げるに当たって混乱を招きかねないため、熱鍼法という独自の呼称を採用している。

<2009.02.17>

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