スライドショー2-16 <エルニド巡礼記 4> 撮影:高木一行 2011.05.11〜18

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ライナーノーツ

高木美佳

エルニド巡礼記 4  撮影:高木一行 2011.05.11〜18

 ジャングル・ハイキングの中盤以降、私は新たな試みである「帰神録音」に専念した。
 観の目の原理を聴覚へと応用し、通常の耳だけで「聞くこと」を心身統合状態で「聴くこと」へと変容させつつ、録音する。スライドショーの作品11は、その模様を夫が帰神撮影したものだ。

 そうやって採録してきたジャングルの<音>を、新趣向として、今回スライドショーとクロスオーバーさせてみた。
 真っ暗な部屋で、ヘッドフォンを使って観照すると、最大の効果が得られる。音量はかなり大きめにした方が、実際の現場の感じに近くなる。面白いことに、自然の音は、大きくても、うるさくない。

「聴の耳」へとシフトするためには、まず「右耳で聴く(注意深く耳を傾ける)」。
 じっくり味わったら、今度は左耳だけで聴くつもりで。
 両方を交互に執り行ない、充分慣れたと感じたら、右耳(だけ)で聴くことと左耳(だけ)で聴くことを、同時に、均等に、意識する。
 2つの別々のことが、同時進行で統一されることで、音に信じられないほどの立体感が出てくる。かしわ手を打って、「聴くこと」に響かせれば、音の空間性が一気に繊細に深まる。
 同時に、観の目も自然に深まってくるのがわかるだろう。
 まったく同様に、聴の耳を意識しつつ観の目を使うと、聴こえ方が視覚と同調しながら一緒に変容していく。

 聴きながら、観る。観ながら、聴く。
 何度も執り行ない、習熟してきたら、「観る」ことと「聴く」ことを、同時に意識する。
 いくどもかしわ手を打ちながら。
 
 これに成功すると、観ることと聴くことの区別がつけがたくなる。
 つまり、視覚と聴覚が融合する。シネセシア(感覚複合)の一例だ。
 こうした新しい感覚体験は、私たちの人生を計り知れないほど豊かにする。

<2011.05.28 紅花栄>

※2011年度 海の巡礼シリーズ:関連リンク
◎Healing Photograph Gallery1『エルニド巡礼記 @フィリピン』/『パラオ巡礼:2011』/『ボルネオ巡礼:2011
◎Healing Photograph Article『エルニド巡礼記・余話
◎ヒーリング・ディスコース『レインボーズ・エンド パラオ巡礼:2011』/『ヒーリング随感3』第3回第6回第8回/『ヒーリング随感4』第21回
◎ヒーリング・ダイアリー『ヒーリング・ダイアリー4